内緒話は校庭で
二次書きました!
・・・と予告までしましたが、よく考えたらここのブログにおいて、この組み合わせにどれくらい需要があるのか疑問だw
ともあれ、二次としては新しい組み合わせ。初剣望くん&またさぶです。二人のイメージが違ってたらごめんなさい~
☆☆☆☆☆
「・・・それで意識がモーローとして車道で行き倒れかけたトコを偶々ハーディ様の車が通りかかって拾って面倒みてもらったの。それだけだって」
光徳学院の広い敷地は人目に付かず密談できる場所に事欠かない。ハーディとの出会いの経緯を半ば脅迫されて又三郎に話す羽目になった狭霧が又三郎といたのもそういう場所の一つだった。
狭霧の話を聞いた又三郎がふうんとうなずいた。間近で見ると、まともに眼をやるのさえ怖じ気づいてしまうような美貌だが、その瞳には面白気な光が躍っていた。
「と、とにかく、そういうことだから」
話は終わったとばかりに、狭霧は「じゃ」と手を振って立ち去ろうとした。だが、又三郎のほうはこれで狭霧を離す気は毛頭ないらしかった。
「彼との出会いはそれとしても・・・そもそも君の家出の理由は何だったの?」
去りかけた狭霧の背に又三郎の質問が飛んだ。
「う・・・そ、それは・・・」
何と答えようかと狭霧は焦った。まさか本当の事を言うわけにはいかない。もっともらしい理由を捻り出すために狭霧が頭をフル回転させていると、又三郎のほうが先回りをして言った。
「ひょっとして家業を継ぐのが嫌だったとか」
「ま、まあ、そんなトコかな~」
笑って誤魔化し、一刻も早くその場を逃れようと狭霧は再び又三郎に背を向けかけた。が、又三郎は全く気にせず質問を続けてきた。
「当たりなんだ。家って何やってんの?」
聞かれてそのまま立ち去ることもできず、仕方なしに狭霧は足を止めて又三郎に向き直った。
「く、薬とか・・・」
「薬局?」
「いや、ちょっと違う・・・」
「じゃ、製薬会社?」
「そんな大層なものじゃ・・・」
ないと言おうとした狭霧の言葉を、しかし、又三郎は途中から聞いていないようだった。それ以上質問を重ねるでもなく独り言のように呟いた。
「家出かあ・・・そっか。その手があったんだ・・・」
思いもよらなかったというようなその呟きに、早くその場を逃れたいと思っていたのを一瞬忘れて、狭霧は思わず又三郎を見つめた。
・・・阿曽宇には何かあるんだろうか?
だが、直感のような疑問が狭霧の中で形になる前に、又三郎はあっさり元に戻った様子で、にっこりと狭霧に笑いかけた。
「でも、すごいよね。まだ小さいのに家出なんてしてさ」
「いや、そんなに小さくないけど」
「そうなの?」
「ハーディ様と出会ったのはそんなに前じゃないし。まだ2ヶ月も経ってない」
「へえ・・・」
意外そうな表情で、又三郎は狭霧の頭からつま先までをつくづく眺めると言った。
「でも、やっぱ見かけによらないね」
「見かけって・・・」
又三郎の言葉にがっくりときて狭霧は呟いた。見た目のせいで中学生に見られることには慣れっこの狭霧だったが、ほぼ初対面の同学年の相手から中坊扱いされるのにはやはり抵抗があった。
又三郎と別れてから、狭霧は先ほどの会話の中で彼がふと漏らしたような呟きを思いだした。そのときに又三郎が一瞬見せた表情。彼が普段は誰にも見せることのない、彼の内面奥深くに隠されたものがどういう訳か表に現れ、すぐに再び内に沈んでしまったのを偶然見てしまったような落ち着かない気分を狭霧は感じた。
なんで、気になるのかな。
又三郎が抱えているものが何なのかは今のところ全く想像がつかない。でも、きっと彼には何かある。
ハーディ様に聞けば何か分るのだろうか。
そういえば、又三郎と話したことをハーディ様に報告しなくては。いつしか狭霧の足は、何かあればここで会おうとハーディが言った四阿のある方角に向かっていた。