Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

【自分の翼ではばたくこと】

2023.11.09 01:30


青の表紙、波の音。

ラ・メール“海“のことばがたおやかに響く。

棚沢永子著『現代詩 ラ・メールがあった頃 1983.7.1-1993.4.1』(書肆侃侃房/2023)を読んだ。

40年前に誕生した「女性による女性のための詩誌」

「現代詩ラ・メール」。2人の詩人、新川和江、吉原幸子責任編集による詩誌と10年に渡るその文学運動は、詩の世界に大きな反響を及ぼした。

編集者として携わった著者の軽やかな文体の魅力に惹き込まれて、詩人たちの声、佇まいがリアルに感じられた。

「女の声」というものが、しなやかなたくましさを持って凛と立ち、社会へとことばを響かせていくことの面白さ、その光と影。時に傷つき、倒れそうになりながらも、「女たちの場所」、「女たちのことば」を勇気づけた「ラ・メール」。

私が詩を書き始めた頃に終刊となった「ラ・メール」は、いつも遠いあこがれのように光放つ詩誌だった。

現在、女性の社会的立ち位置や、表現のフィールドは、過去に比べ、大きく広がってはいるものの、未だ古い価値観に触れ得る場面も多い。

終刊号の「ご挨拶」のことばが、心深く届く。

「自分の翼ではばたくこと。明文化して掲げはいたしませんでしたが、それが「現代誌ラ・メール」の一貫した理念でありました。」

この上なく自由に、おおらかに

ことばの大空へと自分の翼ではばたくこと。

女の手が切り拓いた

何枚もの白いページは

今なお鮮やかに輝いている。


★神泉薫/Kaoru Shinsen information★