自律神経と過敏性腸症候群(IBS)
闘争-逃走反応と自律神経
闘争-逃走(とうそう-とうそう)反応という言葉があります。
韻を踏んだ上手いいい方ですが、英語でも fight-or-flight response といって韻を踏んでいるところもそっくりな表現があります。
私たち人間の祖先が、それこそ棍棒のような武器しか持たなかったころから自分の身を守るための本能として持っているもので、人間以外にもやはり同様の反応を見ることができます。
自分の身に危険を及ぼしかねない危険な相手が現れた時に、戦うのか、それとも逃げるのか。
『逃げるが勝ち』という諺があるように、実は逃走も戦いを前提としています。
例えば、ハイキングの途中で突然クマに遭遇してしまったら、あなたならどうしますか?
生き残るためには、可能性が低くても戦うのか、それとも素早く逃げるのか?
クマを目の前にして、戦うのと逃げるのとどちらが生き残れる可能性が高いだろうと熟考を始めたら、それこそ命の危険です。
このため、私たちの体は危険(ストレス)を感じると、瞬時に戦うか、もしくは逃げるための準備を整えます。
戦うにしろ、逃げるにしろ脈が速くなり、筋肉が緊張し、血圧が上がります。
このような準備を一瞬で整えてくれるのが、自律神経の役割なのです。
ちなみに、死んだふりというのはあまり効果がないと分かってきているので、おそらくこれをされる方は少ないと思いますが、あまりの恐怖に意図せず気を失ってしまうことはあります。
実は、皮肉なことに、このような失神も自律神経の働きによる血管迷走神経反射と呼ばれる反応伴うものですが、ここではまず「闘争-逃走反応」における自律神経の働きについて考えたいと思います。
自律神経の緊張と過敏性腸症候群(IBS)
先ほども述べたように、この働きは私たちが生きていくために必要なことです。
しかし、現代社会において、私たちの生活は変化し、幸いに平時において命の危険を感じるような場面に遭遇することは少なくなってきました。
一方で、精神的なストレスを感じることは非常に頻繁になっています。
『常に』感じているという方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
闘うか、逃げるか…実はそんな緊迫した状況を自律神経の理屈で考えれば排便という選択肢はやや矛盾しています。
先ほどの例のように、熊にトイレに行くからその間は待っていて欲しいといっても、まず待ってはくれないでしょう。
実際、本来排便時にはリラックスしたときに有意となる副交感神経の方が働くとされています。
では、なぜ過敏性腸症候群(IBS)ではストレス(危険)を感じる下痢になったり、便秘に伴う腹痛が生じたりするのでしょうか?
本来、危険を感じた状態では、私たちの体はこれらの危険に対処するために筋肉を緊張させます。
そのためには通常腸管などに回している血液やそこに含まれる酸素を筋肉に優先的に送ることになります。
一時的なものであればいいのですが、この状態が長引くと問題が出てきます。
空気を入れ過ぎたタイヤのようなもので、緊張状態に備えるための張りつめた状態が長く続くと、腸への血流が低下=腸の機能が低下した状態が続くことになります。
このため、本来はリラックスした状態で行われるはずの排便が、緊張に伴い、思ってもみない形(下痢や便秘)で生じるようになったのが過敏性腸症候群(IBS)ではないかと言われています。
ここからはあくまで推測論
このほか、「逃走」に関連した下痢を説明する例として逃げるためには体を軽くする必要があり、少し汚い話ではありますが脱糞することで少しでも体を軽くするという説もあります。
ウサギやシカのようなコロコロした便は排泄しながらでも逃げられるようにという説があります。
便秘型の過敏性腸症候群(IBS)でコロコロした便しか出ないというのはもしかしたら、常に身体を逃げられる環境に置かなければ、という過緊張によるものかも……しれません。
ストレスはゼロにすればよいというわけではない?
では、ストレスを感じないようにすればいいのか?
理屈上はそうなりますが、現代社会においてストレスを避けるのはハイキング途中でクマに遭遇するより確率は高そうです。
また、適度なストレスは、社会生活を営む上では不可欠になっています。
実際、仕事を辞めたら過敏性腸症候群(IBS)が良くなると思っていたのに改善しないという方もいらっしゃいます。
また、皮肉なことに仕事中は症状が出にくく、リラックスしているはずの休日や家の方が症状がでやすいという方も居ます。
この辺りは腹部への注意との関連も少なからず関与していると思われます。
このため、過敏性腸症候群(IBS)スッキリプロジェクトではストレスが全くないことを目指すのではなく、過度に感じていたストレスを、適度なレベルに落とすためのお手伝いをさせていただいています。
少しでもご興味がありましたら、ぜひお問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。
時節柄、まずはメールやお電話でお返事をさせていただいております。
何か疑問点があればご連絡ください。
大変な時期ですが、皆様におかれましてはお体どうぞご自愛ください
修正 2020年4月9日
素材
写真 写真AC クリエイター:3120さん
写真 クリエイター:Akinori Matsuiさん