おならと過敏性腸症候群(IBS)
おならの匂いで病気でが分かる?!
食事中の方は申し訳ありません。
消化器内科の外来には、おならのにおいがきつくなった…何か悪い病気になったのではないかという方が時々訪れます。
しかし、最初の訴えにはなくても、過敏性腸症候群(以下IBS)の方に話を聞いていくと、少なからず「実は…」と話し始められることがあります。
消化管は口から肛門まで一本の管になっているので、肛門からでてくるガス(おなら)の大部分は口から食べたり飲んだりするときに一緒に飲み込んだ空気からなります。
ハッキリした研究がなされているわけではないのですが、おおよそおならの7割の成分が空気で、残りの大部分が腸管で産生されたガスと言われています。
因みに、腸管からも一部の空気やガスは体内に吸収されているので、全てがおならとして出てくるわけではありません。
通常空気は無臭で、匂いがつく原因は腸管内、とりわけ小腸の細菌の働きによります。
このため、食べた物の種類や量、又は体調、腸内の細菌の種類によりガスの発生量や臭いが異なってくると考えられています。
また、草食動物と肉食動物ではおならの匂いや大きさが異なってくるのもこれが理由だと考えられています。
過敏性腸症候群(IBS)における「おなら」の問題点
「自分のおならが周囲の人に嫌な思いをさせ、そのために他人に迷惑や嫌な思いをさせるのではないか」
「周りの人が音や臭いでふりかえるのではないか」
こんな考えが頭に浮かんだら、皆さんならどんな行動に出るでしょうか?
例えばエレベーターやエスカレーター、狭い教室などでお腹が張ってくると強い不安に襲われるので、ついこれらの場所を避けてしまう…
これはとても気遣いにあふれた行動とも考えられます。
しかし、本人にしてみると、これを繰り返すうちに行動範囲が狭まうだけではなく、不安が時間の経過とともに悪化するのがIBSの問題点です。
もちろん、食生活や生活習慣を変えてみることは有効だと思います。
また、近年注目されている腸内細菌叢を整えるためのプロバイオティクス(いわゆる善玉菌を摂取する)なども有効かもしれません。
しかし、他の人からは気にならないよ、気付かなかったよと言われても不安が強くなってしまうような場合は抗不安薬などの薬物や心理療法も有用となってくるかもしれません。
そもそもおならは悪いことなのか?
勿論マナーの問題はあるので、いつでもどこでも出していいというわけではありませんが、腸閉塞を起こした人が「ガスがでた」とおっしゃれば、大概の医療者は喜びます。
ガスを止めたいという悩みの方には申し訳ありませんが、やはりガスが全くでないというのは異常な状況です。
消化器内科で行けば真っ先に「腸閉塞」という病気が疑われます。
健常な成人のおならの回数は1日14-20回前後とも言われています。
(by Wikipedia:研究としての報告は見つけられませんでした。イグノーベル賞などを取れそうな面白い研究になりそうですが…。)
そのすべてをトイレで行うのは非常に困難です。
それこそ頻回のトレイが必要になってしまいます。
IBSでおならの悩みを持たれている方は、とかくこのくらいなら許されるだろう、しかたないか…という線引きが(自分に対して)厳しくなりがちな印象があります。
悩んでいるのは自分だけではないという話を安心、安全な場所で話してみることで、これまで考えていた「常識」がもしかしたら少し偏っていることに気付くことがあるかもしれません。
「頭ではわかるけど、気持ちがね…。」
という方に、スッキリプロジェクトでは認知再構成と言ってこういった考え方の見直しをするお手伝いもさせていただいています。
もし、IBS症状で悩まれていることがありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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(ちなみに、スカンクが身を守るために出すのははおならではなく、肛門の近くにある専用の肛門嚢と呼ばれるところから出す分泌液の匂いです。)
写真素材
Pixabay スカンク
写真AC クリエイター:胡麻麩あざらしさん