丸編み生地製造の勉強-綿糸が出来るまで-
先日とある大手アパレル企画職25名くらいの大所帯を引き連れて工場見学(一泊二日行程)を行なった際にお邪魔させていただいた大正紡績さんから資料をいただいたので綿糸が出来るまでの勉強をしてみたいと思う。
大正紡績さんのサイトはこちら↓
綿糸とは、いわゆる綿(コットン)の糸である。
コットンとは植物で、農産物である。
知ってると思うけど忘れられがちなのであえていうが、天然繊維とは自然からの恵である。
天候が悪ければ育ちも悪く、物量が減るので価格が上がったり品質が落ちたりする。
そんなコットンが糸になるまでのジャーニーを紹介する。
綿花を収穫するまでの栽培に関しては、話すと2時間くらいかかるので割愛するが↑こんな感じで咲いたコットンボールだけを集めて圧縮して紡績工場へ送られる。
余談だが、このコットンボールからワタを取り除いた後に捨ててしまう種の周りに残っている産毛を溶かして繊維化させたのがあの有名なベンベルグ。そう、それはエコ。
工場へ送られたワタの塊↓
このワタの塊をほぐしながらゴミを除去していく。
天然繊維なので取れる時期によって綿花の色が違ったりする。
なのでこの段階で品質が一定になるように、綿花の取れたロットをうまく混ぜながら白度を保ったりする。混打綿という行程↓
そして綿繊維の向きを揃えながら繊維の長さを均一に揃えていく。髪の毛を櫛で梳かすイメージで綿の繊維を揃えて束ねていく。梳綿という行程↓
ここまできたらまぁほぼ糸なんだけど、この状態のことをスライバーという。
そして、そのスライバーを規定の細さ(長さ)になるまで引き伸ばしていく。練条という↓
こうやってウニョウニョさせながら引き伸ばした物を8本くらい集めてまた引き伸ばしていく。粗紡という↓
もう8割糸になってるのだが、ここにさらに撚りを加えて完全に糸にする精紡という行程↓
この精紡行程で機械に付いている輪っかみたいな部分に粗糸を当てながら撚り上げていくからリング紡という。一般的な糸はほどんどこの紡績方法。
このままでは編めないので、最後にコーンアップしてようやく見慣れた糸の形状になる。
巻き上げるのに少し角度が付いているのはコーンと言って糸がコーンから離れていく時に離れやすくする工夫である。こういうちょっとした所にも先人たちの知恵が詰め込まれている。
これがファッション業界の最川上の行程の一つである。
ここから編織工場へ送られ、生地になり、服になる。
最近批判されている「布を切って縫うだけの服」を作る前の段階の糸を作る行程だ。この工場だけで何十人も糸を作る仕事をしている。
ワタとって撚れば糸になるわけじゃない。
この糸になる前にたくさんの異邦人が自然環境と戦いながら高い農薬を買い綿花を育てている。
買い叩かれている洋服はこういう人たちの生産活動の上に成り立っている。