【詩人のNomeさん】性別は「無性別」。性同一性障害を背負いながら、不便なく、不自由なく生きていく中で、詩を書き続けたい。
(前回の記事はこちら→詩は、詠み手と受け手の解釈が違っていて良い。人の気持ちがわからない「発達障害」を抱える詩人。)
――― 前回、Nomeさんは「無性別」というお話をされていました。
Nome はい。私は生まれたときの戸籍は「女性」でしたが、いまの性自認は「無性別」です。
――― つまり、「女性」でも「男性」でもない、ということですね。
Nome そうですね。自分の性別については子どもの頃からずっと違和感を持っていて、例えば赤いランドセルが嫌だったり、女子トイレやプールが嫌だったり。
自分でもなにが嫌なのかわからないまま過ごしていたんですけど、中学二年生のときに性同一性障害の人が出てくるドラマを見て、「あ、これかも?」って。
――― 知ることで、わかったんですね。
Nome 知らなかったら今頃どうして生きていたんだろう・・・生きていなかったかも知れませんね(笑)
親に相談したのは中学二年生の10月頃です。「私なんか変だから、診てもらえる病院調べて」って。
――― それまで親御さんとそういった話はされていなかったのですか。
Nome していませんでした。親が買ってくる女性用下着とかはとにかく嫌で、引き出しの奥に押し込んでいたり、生理の話が出たりすると、それもとにかく嫌で怒ってましたね(笑)
そういう時期の女の子って思春期で照れくさいとか、そういう意味で反抗的な態度を取ったりはあるのかなとは思うんですけど、自分はとにかく嫌で嫌で、なぜかは自分でもよくわからなかったですね。
――― 病院に行かれたあとはどうされたのですか。
Nome 病院に行き始めた頃は、世の中には「女性」か「男性」しかいないと思っていましたので、「女性じゃないから、男性か」と思っていたんです。
それで中学二年生の冬まではセーラー服で登校をしていたのを、年が明けた頃にジャージ登校というインターバルを挟んだ後に学ランになりました。
ですので、中学三年生からは男子生徒として学校に通っていました。
↓中学生の頃のNomeさん
――― 途中で制服を変えるというのは勇気が要ったんじゃないですか。
Nome あまり何も考えていなかったというか、「発達障害」のおかげなのか人がどう思うかに関心がなかったので、あまり深刻には思っていなかったですね(笑)
でもいま思うと、「女性」から「男性」という形だったのでまだ周りも理解できる部分はあったと思うんですけど、いまのように「無性別」と言っていたらもっと大変だったでしょうね。
――― たしかに、まだ女性か男性のどちらかしかないと思っている人が大半だと思います。制服がセーラー服から学ランになってから、周りの反応はどうでしたか。
Nome 友達なんかは「男の方がしっくりくるね」って言ってくれる人はいました。
あんまり詳しくない人だと「なんで男になりたいの?」って直接聞いてくる人もいましたね。
他のクラスから冷やかしじゃないですけど、見物に来る人はいましたね・・・懐かしいな(笑)
――― 学生生活では、服装以外にもいろいろと大変なことはあったんじゃないでしょうか。
Nome やっぱりトイレが男女別にしかなかったり、体育の授業のときの着替えが気になったり、あとプールの授業は「水着忘れました」って言ってさぼっていましたね。
修学旅行が中学三年のときにあったんですけど、先生がいろいろと考えてくれて、部屋割りは男子部屋でご飯を食べて、寝るときは別室を用意してくれて、お風呂もそこで入りました。
自分としてはお風呂だけは別にして欲しかったので、結果的にそういう形になったみたいです。
――― 先生方もご理解がある方々だったんですね。
Nome そうですね。学ランに変えるときは反対する先生もいたみたいなんですけど、それも理解できないからではなくて他の生徒からからかわれることを心配してのことだったので、そういう意味ではみなさん理解を示してくださって。
とにかく校長先生が「本人がどうしたいかが一番じゃないか」っていってくれていたんです。
校長先生が良い人で良かったです。
――― 中学校卒業後はどうされたのでしょうか。
Nome 定時制の高校に、最初から男子生徒として通っていました。
基本的に私服もOKで、車いす用トイレがあったので特に困ることはなかったですね。
あと定時制だったから特にそうなのかもしれないんですけど、いろんな子がいましたね。
ひどいいじめにあってきたとか、親がいないとか。
だからこそお互いの個性を尊重するような雰囲気があったと思います。
↓高校生の頃のNomeさん
――― 友達もすぐにできたんですね。
Nome 高校に入って割とすぐのときに「学内弁論大会」っていうのがあって、そこで「性同一性障害」の話を発表したんですね。
それを聞いた友達が「あいつと仲良くなりたい」とか「肝座ってんな」って言ってくれて(笑)
――― すごい勇気だと思います。
Nome そしたら学内で優勝して、市大会でも優勝することができたんですね。
その時のタイトルは「個性を生かす」で、内容としては「障害も一つの個性である」ということを伝えたんですけど、次の年の二年生のときは「少数派」について書きました。
それで高校二年生のときも市大会で優勝できたんです。
――― すごい!
Nome 高校を卒業して、許可が出る20歳になってすぐに内臓系の手術をして戸籍を「男性」に変えました。
「男性」としてしばらく暮らしてみたんですけど、でもなんか「男性」というのもどうも違う気がしていて。
それで21歳の頃に「無性別」というのもアリなんだということに気が付いてからは「無性別」という風に言っています。
――― ジェンダーの話には、いまおっしゃった性自認の話と、性的指向、つまり「好きになるのはどの性別か」の話もありますよね。
Nome そうですね。私の場合、性自認は「無性別」で、性的指向は「特になし」です。
一言でいうと「性別で相手を見ていない」ということですね。
人として好きかどうかということの方が大事という考え方です。
ちなみに、「無性別」というのは、男性でも女性でもないわけですから、私にとっては女性も男性も異なる性なので、どちらも異性ということになります。
――― なるほど、だから前回の「応募要項に”男女”と書いてあると応募ができない」ということになるわけですね。
Nome はい。私は男女のどちらでもないので。
――― たくさんお話いただいて、ありがとうございました。あまり聞くべきではない質問もあったかも知れませんが、すべてご返答をいただき感謝いたします。最後に、Nomeさんの今後の展望を伺えますか。
Nome 不便なく、不自由なく生きていく中で、詩を書き続けることができたら良いですね。
詩人の活動としては本を出したいです。
いままで見てもらわなくてもなって思っていたけど、本っていう形にしてみたいっていうのは思います。
あとは表現ということで言えば、お芝居が大好きなのでそれもやりたいです。
実は毎日のように、友達と数名で台本の掛け合いをしたり、設定をつけてエチュード(即興劇)で掛け合いをするようなことをしています(笑)
↓養成所に通っていた頃のNomeさん
――― お芝居もお好きなんですね。あとはNomeさんはアクセサリー作家としてもご活動されていますよね。
Nome はい。私が作るのは天然石を使った世界に一つだけのオーダーメイドなんですけど、それも続けていきたいです。
オーダーいただいたアクセサリーは、おつくりする前に必ずカウンセリングをするんですけど、例えば「お金持ちになりたい」と言われたら、そのお金は、
- 自分の仕事や事業で稼ぎたいのか?
- 貯金を増やしたいのか?
- お金を持った方と知り合いたいのか?
といったことを掘り下げて伺いながら、相手に合ったものをおつくりします。
↓Nomeさんのアクセサリー作品
――― なるほど。例えば、深堀りしたら「新規事業を成功させたい」が本質部分とわかったら、それに合った石を使うんですね。
Nome そうですね。ご予算に応じて、行動力を促すパワーを持った石を使ったりします。
そういう効果って科学的に証明は難しいですけど、信じる力がパワーになるっていうのは石に限らずあると思うんです。
だからなにか良いことがあったときに「あ、このアクセサリーのおかげだ」って思えたら、その後もより力になってくれたりすると思うんですね。
――― 実際にNomeさんに製作をお願いしたいときはどうすれば良いですか。
Nome Facebookから問い合わせをいただければ、メッセージのやりとりでカウンセリングをしながらおつくりすることもあります。
できれば一度お会いできると、好みなど伺いながらつくれるので良いですね。
あとは茅ヶ崎の「カフェのあるめがね屋さん一丁目四番地」というお店でイベントをやらせていただくこともあります。
――― よくわかりました。興味をもった方がいましたら、ぜひお問合せしてみていただければと思います。インタビューは以上です。ありがとうございました。
(おしまい)
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【湘南・茅ヶ崎で暮らす人】詩人のNomeさん(アクセサリーブランドforA)
・第1話:詩は、詠み手と受け手の解釈が違っていて良い。人の気持ちがわからない「発達障害」を抱える詩人。
・第2話:性別は「無性別」。性同一性障害を背負いながら、不便なく、不自由なく生きていく中で、詩を書き続けたい。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。