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中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

”勝手に”『映画の朝ごはん』公開記念。海外現場のロケめし事情①

2023.11.11 02:01

 映像作品の撮影現場に欠かせない弁当店「ポパイ」にフォーカスしつつ撮影現場の”今”を映し出したドキュメンタリー映画『映画の朝ごはん』(志子田勇監督)がキネカ大森他にて全国順次公開中です。

 筆者の率直な意見はシネマトゥデイの短評に記したのでここでは割愛しまして、せっかくなので勝手に映画公開記念を。筆者がこれまで参加した海外ロケの食事事情を、これからいくつか紹介します。

 実は筆者、雑誌「日本映画navi」で以前、ロケめしの連載を執筆していました。

きっかけは鈴木清順監督『オペレッタ狸御殿』(2005)で中国出身の俳優チャン・ツィイーを取材したとき。

 日本の現場について感想を尋ねたら「冷たいお弁当を食べたのは初めて」と。

 衝撃でした。当時は、ハリウッドのようなケイタリングは少なく、日本の映画のロケ現場においてお弁当は定番。しかもさまざまなおかずが詰められて見た目にもワクワクするだけでなく、”冷めても美味しい”。むしろ日本自慢の携行食だと思っていました。

 確かに医食同源が根付いている中国では、体を整えるために食に気を使い、温かい料理や飲み物で新陳代謝を高めることが習慣となっています。それは体が何よりの資本である撮影期間だからこそ、譲れなかった部分なのでしょう。ちなみに「東宝撮影所のラーメンが一番美味しかった」そうです。

 以降、撮影現場における食事事情に注視するようになりました。

 でも残念ながら、時間のない撮影現場において食事は最も疎かにされがちでした。

 とあるVシネマの現場では、ほか弁で一番安い揚げ物オンリーの弁当だったり、食事を摂る時間もないから、スタッフがコンビニおにぎりを頬張りながら撮影していたり。さらに切羽詰まる状況になると「メシ押しで行きまーす」(食事時間を後にすること)となることも。

 これは現場取材に入っている記者にとっても試練でして、お腹が鳴ったり、低血糖で倒れて現場に迷惑をかけないよう、ポケットにこっそりチョコレートやクッキーを忍ばせて急場を凌ぐ対処法を編み出して行きました。

 これではやはり、体が持ちません。免疫力が落ちると体調も崩しやすくなります。何より集中力が切れると、仕事の効率が悪くなるだけでなく、思わぬ事故にも繋がりかねません。

 現状を変えるために、記者として何か問題提起できないか?と思って始めたのが先に述べた連載です。

 連載では、映画『南極料理人』(2009)の極寒の北海道ロケで、なんとかスタッフに温かい料理を提供しようと、ラップで包んだおにぎりを湯煎で温めていたというケイタリングスタッフの奮闘。

 コーヒー好きの高倉健さんのために、好みの味を求めてさまざまな店を巡り、映画『あなたへ』(2012)の現場で提供したスタッフの心遣いなど。撮影現場の食事事情を少しでもより良いものに変えようと奮闘している方たちに出会えました。

 ただ結局、「貧しい現場だと思われたくない」との理由や、「現場が忙しく取材に対応できない」などの理由で現場に入ることが難しく、連載は尻切れ蜻蛉で終わってしまいました。

 というわけで海外ロケの食事事情を参加した時にちゃっかり撮った写真とともに、蔵出ししていきます。続くー。