花の想い
2018.09.26 15:01
蒸し暑い夏が過ぎ、夕方が少し涼しくなってきたので私は散歩に出かけた。
ゆっくりと夜が近づいているのを感じながら歩いていると、地面に小さな花が咲いている事に気が付いた。
そうだ、部屋にでも飾ろう。
そう思い、私は屈んで花の根元を掴んでブチリと千切り取ったのだ。
小さな花を手に、私は立ち上がって帰ろうとした。
「ああどうして」
背後から声がした。
振り返るが誰もいない。
「ああああああ・・・」
足元だ。
下を見てみると、さっき私が摘み取った花の横に咲いていた花が、ぽたりぽたりと涙を流していた。
「ううう、彼を摘んだのはあなたですね。
恨めしい・・・。私は彼の事を慕っておりました。
しかし言えず、言わずともただ彼の隣で咲き朽ちられれば幸せだと、そう思っておりました。なのに・・・なのに・・・
ああ恨めしい。でも非力な私では貴方を殺すどころか叩く事も出来ない。
ならば私を彼と同じやり方で殺して、そうして一緒に飾ってくださいな。
きっと綺麗なはずです。きっと美しいはずですから。」
ウッ・・・ウッ・・・
そういってまた、花は大粒の涙をこぼし始めた。
私は泣き止んだ花を片手に家に帰り、庭に穴を掘った。
そして二輪の小さな花を並べ、来世の幸せを祈りながら土をかけていった。
夜が私たちを包み込む。