平成を顧みて
1989年(昭和64年)1月7日、テレビ画面を眺めていると突如番組が切り替わり、一つのニュースが伝えられた。昭和天皇の崩御である。
翌日の8日からは新元号である平成がはじまり、突然幕を閉じた昭和の余韻を感じる間もなく、それから30年が経過し、その平成も来年の4月をもって終わりを迎える。
もうしばらくすると、平成とは何だったのか、といった特集や、平成という時代についての考察が幾所で行われるだろう。
私もまた、この平成という30年を振り返り、私なりの時代的感覚を記しておきたい。
その前に、平成で起こった出来事の中で、強く印象に残っているものを年表で示しておく。
1989年1月7日。昭和天皇ご逝去。
1989年1月8日。明仁親王が即位(平成の始まり)。
1989年4月1日。消費税導入(3%)。
1989年11月10日。ベルリンの壁崩壊。
1990年1月7日。『ちびまる子ちゃん』放送開始。
1990年8月2日。イラクによるクウェート侵攻。
1991年1月17日。湾岸戦争開始。
1991年2月。バブル景気の終了。
1991年4月1日 。 協和銀行と埼玉銀行が合併し、協和埼玉銀行発足(現りそな銀行)。
1991年5月15日 。ジュリアナ東京オープン。
1992年7月25日。バルセロナオリンピック開幕。
1993年1月1日。欧州連合 (EU) 発足。
1993年7月12日。北海道南西沖地震。
1993年7月18日。55年体制の崩壊(自民党は野党に)。
1994年6月27日。松本サリン事件。
1994年6月30日 。村山富市内閣発足(自民党の与党帰り)。
1994年9月4日 。関西国際空港開港。
1994年10月4日。北海道東方沖地震。
1994年10月13日。大江健三郎、ノーベル文学賞を受賞。
1994年12月3日。 ソニー、プレイステーション発売開始。
1995年1月1日。WTO発足。
1995年1月17日。阪神・淡路大震災。
1995年3月20日。地下鉄サリン事件。
1996年7月19日。アトランタオリンピック開幕。
1997年3月19日。東電OL殺人事件。
1997年5月27日。神戸連続児童殺傷事件発覚。
1998年。第120回芥川賞(1998年下半期) - 平野啓一郎 『日蝕』。
1999年9月8日。池袋通り魔殺人事件。
2000年3月8日。営団日比谷線脱線衝突事故。
2000年4月1日。介護保険制度開始。
2000年6月~7月。雪印集団食中毒事件。
2000年6月16日。香淳皇后崩御、享年97歳。
2000年9月15日。シドニーオリンピック開幕。
2000年12月1日。デジタル放送開始。
2000年12月30日。世田谷一家殺害事件(未解決)。
2000年12月31日。20世紀の終わり。
2001年1月1日(平成13年)。新世紀開始。
2001年4月1日。オランダで同性結婚法の施行(異性同士と変わらない法整備とした世界初の法律)。
2001年6月8日。池田小事件。
2001年7月21日。明石花火大会歩道橋事故。
2001年9月1日。歌舞伎町ビル火災発生。
2001年9月4日。東京ディズニーシー開園。
2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件発生。
2001年10月。雪印牛肉偽装事件発覚。
2002年3月。北九州監禁殺人事件発覚。
2003年3月20日。イラク戦争開戦。
2003年4月28日。日経平均株価がバブル崩壊後の最安値7,603.76円を記録(いわゆる景気の底)。
2004年4月1日。営団地下鉄が民営化(東京メトロに)。
2004年8月13日。アテネオリンピック開幕。
2004年9月9日。愛知豊明母子4人殺人放火事件(未解決)。
2004年10月23日。新潟県中越地震発生。
2005年4月25日。JR福知山線脱線事故。
2005年12月25日。JR羽越本線脱線事故。
2006年1月1日。東京三菱銀行とUFJ銀行が合併(三菱東京UFJ銀行に)。
2006年5月1日。会社法施行。
2006年9月6日。悠仁親王誕生(未来の国民の休日)。
2007年1月10日。不二家の期限切れ食材使用発覚。
2007年7月16日。新潟県中越沖地震。
2007年10月1日。日本郵政公社が解散。
2008年6月8日。秋葉原通り魔事件。
2008年6月14日。岩手・宮城内陸地震。
2008年8月8日。北京オリンピック開幕。
2009年3月10日。日経平均株価がバブル経済崩壊後の最安値を更新。
2009年5月21日。裁判員制度開始。
2010年4月27日。改正刑事訴訟法が成立。
2011年3月11日。東日本大震災。
2012年7月27日。ロンドンオリンピック開幕。
2013年12月6日。特定秘密保護法成立。
2014年2月。平成26年の豪雪。
2014年4月1日。消費税増税(5%→8%)。
2015年9月9日。平成27年9月関東・東北豪雨。
2016年4月14日~16日。熊本地震。
2016年7月26日。相模原障害者施設殺傷事件。
2016年8月5日。リオデジャネイロオリンピック開幕。
2017年10月31日。座間9遺体事件。
2018年9月6日。北海道胆振東部地震。
歴史を語る上で、注意しておかなければならないことがある。
そこには、神の視点なるものは存在しない。
年表で出来事を並べれば、そこには客観的な事実が無機質に並べられているようでいて、裏では取捨選択の力が働いている。
科学技術に明るい人間であれば、年表に表れるのは技術発展に対する出来事や技術の禍福の点が多くなり、世界は政治が動かしていると考える者であれば、年表には政治の話題がちりばめられる。
そして年表に刻まれた出来事は、並べた者の思惑を反映することとなる。
つまり歴史とは客観的な事実ではなく、表現したい者による意思の結果である主観的な認識の表現である。
そのことを前提に、改めて、事件、人災、天災が多数起きたこの30年史を眺めていきたい。
マザーユニバースに起きたエネルギーの拡散ービッグバンから現在は138億年が経過し、1000億年(一説によると1400億年)後には、すべての熱エネルギーが宇宙の果てまで均質に広がる熱的死を迎える。
そのときには、すべての物質はすでに宇宙上に存在していない。
ビッグバンの数万年後にエネルギーの波動により誕生した素粒子は、いくつかの変遷を辿りながら、水素という単一の物質となった。
素粒子はさらに多種の組み合わせを生み、ヘリウムやリン、炭素などの物質が生まれることとなった。
その物質たちも(私を構成したすべての分子も含めて)、わずか1400億年後には素粒子の崩壊や対消滅と言われる事象により、存在期限が過ぎることとなる。
138億年前に誕生した多数の素粒子は、何の因果かは分からないが、138億年後にそのいくつかが集まり「わたし」という存在を構成している。
私はやがて死に、火葬され、水蒸気とわずかなカルシウムの残滓となる。
そうして私を構成していた物質はまた、再び何かを構成する物質に変わっていく。
宇宙誕生から消滅までの経過で起きた、1400億年分の30年という、宇宙がまばたきをする一瞬の間、我々は今、奇跡のように生きている。