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更夜飯店

美しい夏 キリシマ

2018.09.27 06:58

美しい夏 キリシマ

2004/01/31

岩波ホール

1945年8月。戦争が終わった夏。

それを宮崎県の霧島を舞台に普通の人々の普通の生活を通して、戦争とはなんだったのか、静かに問いかける、

静かな静かないい映画でした。

戦争というのはドラマチックであり映画の題材によく取り上げられるものの、戦争に巻き込まれる人々の生き抜く、耐え抜く、しのぶ姿はありません。

冒頭、グラマン機が飛んでいても主人公の少年、康夫は普通の風景としててくてく歩いています。

村の人々も農作業をしたり、祭りがあったり・・・戦争らしいのは陸軍の兵隊たちが駐留しているくらいで、それも訓練しかしていません。

しかし、普通に暮らしているような人々の心の中に潜む「戦争への恐怖」が少年を中心とした様々な人達を描く事によって「わたしの戦争」を描いています。

玉砕した沖縄に近い、ということから、沖縄から逃れてきた少女がいたり、戦争で夫をなくした妻と兵隊の情事、

南方で負傷して戻ってきた男と少年の家のお手伝いさんとの婚礼・・・静かなやりとりの中に「戦争の影」が

落ちています。しかし、誰もそれを声高に訴えたりはしない。

少年、康夫は黒木和雄監督自身の経験そのままだそうです。

少年は両親が満州に行った為、祖父母の家で暮らしていますが、肺を病み、自宅療養の身。

厳格な祖父(原田芳雄)はなにかとそれが気に入らない。常に高慢な頑固さでもって少年に接します。

それに反抗することもできない少年の内心の自責の思いと怒りは一体どこにむければいいのか?答えは映画には出てきません。

全編、霧島の風景が美しく、山も森も田圃も川もすべて静かに美しい風景です。

人々のそれぞれの心情が、美しく描かれていて、特に南方で足をなくした男、寺島進さんの優しさと無念さが心に残ります。

他にも泥棒兵隊・香川照之、石田えり、牧瀬里穂、そして少年康夫役の柄本佑・・・自然な演技が胸にしみます。