サロメ
2018.09.29 05:52
サロメ
2003/12/16
ル・シネマ
オスカー・ワイルドの『サロメ』といえば、ビアズリーの挿絵のあの本・・・くらいの記憶でした。
ビアズリーの描くサロメはペン画で細身であまり女性らしさはありません。(映画にも少し出てきます)
これをフラメンコ・バレエという形で全く違う独自の世界を作り上げた力量にまず、感心。
ダンサーはサロメ役のアイーダ・ゴメスをはじめ、クラッシックバレエで鍛え抜かれた人ばかり。
そこへ、フラメンコとモダン・バレエの要素をミックスさせて、舞台装置に頼らず鍛え上げられた
肉体で、官能の世界が繰り広げられます。最初にインタビューや打ち合わせなど入りますが、
本番と同じ衣装をつけたリハーサル(ゲネプロ)を、「カメラは私の目である」と言うように監督の
視線だけ、で追っていきます。
台詞はいりません。もう、観ていればその表現力でサロメの狂気の愛がわかるでしょう。
光と影と色で構成された舞台、緊張感あふれる肉体のダンス、東洋風の衣装と音楽・・・それを
堪能できるだけ十分ですし、
悲劇と官能を踊りだけで表現できるアイーダ・ゴメスは素晴らしい。
悲劇というのは狂おしく、人間は誰もが悲劇の要素を持っている。だから人はいつの時代も悲劇を
求めるのでしょう。
(泣ける映画が観たい、というのも悲劇で自分が浄化されるのを求めているからかもしれません。)