Beppu mime Labo

2007夏の旅 北九州

2007.08.14 20:17

熊本での不振を背景に

起死回生の望みを託した地は小倉

初めて演技をする上、土地勘もない

言わば、これはギャンブルである


国道三号線を便りに小倉駅に到着したのは午前三時過ぎ。街には人の気配は殆ど無い。お盆とは言え、大丈夫なんだろうか、とまたもや不振の文字が頭をよぎる。

とりあえずは繁華街のチェック、人の流れの考察、活動の可能そうな場所のピックアップ。不慣れながらに情報収集は不可欠なのだ。

大道芸をやり易い街もあれば、やりにくい街もある。

熊本はとてもやり易い街だ。土地勘があるのも要素として大きいが、人の流れがシンプルで場所の確保もし易い。土地の人間性に依る処は大きいが、基本的に楽しい事が大好きなのだ。

福岡はやりにくいの一言。人と人との繋がりに希薄な印象がある。東京と似てるかな。

そして小倉は…、

正直言ってやりにくい街だ。アーケードは格子状に張り巡らされていて、人の流れは一貫性がない。そして狭い、かなり狭い。道幅が5~6メートルしかない。駅周辺では出来る所は皆無である。

でもやると決めた以上やるしかない。一旦睡眠を取って、日中の人の流れを見て決めることにした。

午前11時の駅周辺。予想通りだった。いかに盆休みとはいえ、百万人都市の活気ではない。

それでもよく観察すると、わずかではあるが共通の流れの集中ポイントがあった。

リバーウォークである。少しずつではあるが、駅を出た人々はここに辿り着く。

直射日光に照らされてはいるが適当な広場があったので、そこで陣を張る事にする。

時々、近くを警備員が通る。注意されないか、K察を呼ばれないか、と心配していたが大丈夫なようだ。

演技を三時間行う。

日差しと暑さとの格闘。

過酷な環境下、笑顔はすでに消えていた。

不振もあった。プレッシャーもあった。


最悪だった。売り上げも三桁に留まる始末。時々投銭を入れてくれるのは子供中心。しかも、

「あつそうだねー」「がんばってねー」

物乞い状態じゃないか!!!


失意の中、撤収作業中に中学生の女の子に逆ナンされる。

「どうだった?」と聞くと、

「まつ毛長いですよね~」

ほんとに只の逆ナンだった…。


折角なので一緒にスタバでお茶をする。その時、一枚のポスターを発見する。

「門司港納涼花火祭り 八月十三日」


このチャンスを逃す訳にはいかない。勝負は門司港花火に持ち越しとなった。


小倉駅を出発したのは午後五時。無論、電車ではなくバイクでの移動になる。

「門司港納涼花火祭り」どれ程の規模なのか皆目見当もつかない。

リバーウォークを行く人々に祭りについて聞くのだが、以外に知らない人が多かった。実際、小倉門司間はそこそこ距離もある。

現状として解った事は、

大体の人は門司レトロ港に集まる、という事

夜七時半から打ち上げ、という事である。


国道沿いに門司を目指すと、多い多い。ヒドイ渋滞だ。やはりバイクで正解だ。それにしても10キロ程も続く渋滞はお祭りの規模を表すものなのだろう。期待に胸が膨らむ。

レトロ港に到着。現地は人と車の海で混乱状態だった。ここまで多いと期待以上で、…勿論、スペースもない。仕方なく、花火でも観るかとイカのゲソ焼きにかぶりつく。

そうこうしていると花火が上がり始めた。物思いに更けていて気付かなかったが、後ろに子供連れの一家が居たので、前の見やすい場所を譲ることにする。

「おじちゃん、ありがとう」

お約束である。

小学生位のお兄ちゃんと四歳位の妹が花火に見入っていると、…雨だ。客足が一斉に動き始めた。まだ始まったばかりなのに。

悪天候にはかなわないよ。


落ち込んでいると、子供が話し掛けてきた。

「おじちゃんも入る?」 

ビニールの敷物を雨よけ代わりに被っているのだ。

「可愛すぎる!!」

落ちていた自分でもさすがに顔がほころんでしまった。ありがとう。

雨は通り雨だった様ですぐに天候は回復する。そして盛り上がりを迎える花火に観衆の声が挙がる。

感動した。その一言に尽きる。

演技開始。流れる客足を気にせず直ぐに着替えを済ませ、今回は場所も狭い為、シンプルな内容で勝負する。

大盛況でした。

花火ありがとう。

一時間強の演技で、不振を吹き飛ばす成功となった。


やはり縁日は大道芸は相性が良いようだ。

そして売り上げの違いに理由がある事に気が付いた。

基本的に投銭は財布に残った小銭を投げ入れるものである。普段一円玉や十円玉により重く膨れ上がった財布に不快感を持つ人は多いだろう。

昼間の演技は一円玉や十円玉が多い。

夜は酒の勢いでお札が入る事もある。

縁日では、そう。百円玉や五百円玉が多くなり、一円や十円は少ない。だから売り上げに是程の違いがあるのだ。


この後、関門海峡大橋を渡るのだが、実の処「意気揚々」という訳でもなかった。

子供らと花火を観ている傍で、誰かが食べ物の容器を投げ捨てた。

吸い殻を普通に海に投げ捨てていた。

海にはペットボトルが沢山浮いていた。

演技終了後に記念に門司港の写真を撮ろうと思った、がやめた。

港はゴミで汚れきっていた。


関門海峡を渡り、最初のパーキングエリアに停まる。

盆の影響か車が多い。人も多い。そしてゴミ箱はすごい事になっていた。

店員さんが黙々と片付けていたので声を掛ける。

「大変ですね」

「ええ、そうですね…」

「毎年そうなんですか?」

「はい、でも年々マナーは悪くなってますね」

「…?」

「ゴミの分別やリサイクルを言われるようになって、ゴミを持って帰りたくないんでしょうね」


何とも言葉に出来ない。

自分も旅行者としてゴミを出しているのだから。