リアルと空想が溶けあう絵本―バムとケロのドーナツ
2018.10.01 12:10
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おだやかな犬のバムとやんちゃなかえるのケロちゃんは、きょうだいのようで友だちのよう。
物語はふたりのささやかな日常を切りとりながら、夢にあふれています。
象徴的なのはふたりが作る山盛りのドーナツ。
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ここを読んで以来、息子にとってドーナツは特別なおかしになりました。
ホットケーキミックスで作った即席ドーナツをうれしそうに食べる息子。きっと絵本の山盛りドーナツを想像しながら食べているんだろうな、と思わせる表情をします。
ふと、その姿が自分の子ども時代に重なりました。
私が憧れたのは『ぐりとぐら』の大きな黄色いカステラ。
絵本を読んでから、食べたことがないカステラがこの世で一番おいしい食べ物になりました。
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『ぐりとぐら』(中川 李枝子 作 / 大村 百合子 絵、福音館書店)より
すぐ手にとどく身近な食べ物が、ありえない大きさや量で描かれる。
リアルと空想が自然に溶けあう絵本。
単に可愛いというのではなく、ロマンがあります。こうした絵本に触れていると、日々のくらしに夢が息づいてくるのだろうと思います。
『バムとケロ』はシリーズで全5冊。
1994年に第一作が刊行されてから長くベストセラーで、第4作『バムとケロのおかいもの』は100万部超え。緻密な描写と、美しく洋書のような色彩で大人にも大人気です。
(吉野/記)