紫竹の家
34坪の敷地に建つ、屋根上テラスと車寄せのある住まい
規模・条件----------
新築:2023年11月竣工
建築地:新潟県新潟市中央区紫竹
敷地面積:112.40㎡(34.00坪)
延床面積:99.79㎡(30.13坪)
構造規模:木造2階建
用途地域:第1種住居専用
道路幅員:南東 4.0m
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住宅性能-----------
BELS (Zeh Oriented)
一次エネルギー消費量等級5
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住宅密集地の中に造成された4区画の分譲地。
4m道路に接する面積34坪と小さめ敷地に建つ、若いご家族のための延床約30坪の住まいです。
メインルーム
この家のLDKは、細長い長方形で約19帖です。
部屋の広さというのは、帖数では判断しにくいところがあります。同じ帖数でも部屋の形が変わると感じ方も変わるし、出入口や窓の位置によって家具の配置が変わるからです。
"広い"だけが良い訳ではない、「親密で包まれたような空間」そんなことを思いながらまとめたLDKです。
キッチン
料理好きのご夫婦がお二人でキッチンに立てるよう少し広めのスペースを用意しました。
加熱機はIHですが、ガスの五徳も使えるようになっています。
キッチンからの眺めも大切に考えています。
リビングのテレビや植込みの緑はもちろん、リビングの出入口を開けていると玄関の様子がチラッと見えるようになっていて、家族のお出かけや帰宅、宅配など確認ができます。
長い時間を過ごせるスペースを意識しました。
洗面・脱衣室
洗面、トイレ、脱衣、洗濯、物干し、タオルや下着の収納、お風呂、これらの水回りスペースをコンパクトに1ヶ所にまとめました。帰宅後の家事効率を上げることが目的です。
"物干し"に設けた「無双窓」は洗濯物の湿気を逃がし、LDKを加湿します。
"洗面"は奥様がお化粧をするところでもあり滞在時間が長いので、雰囲気も大切にしています。
ナラ材のカウンターやタイルの巾木、かわいい棚板など、好みをしっかり反映させています。
北の窓
新潟市では夏の暑い日の午後に、北よりの風が吹く日が多くあります。
(8、9月は全体の3割が北よりの風になります)
その風をうまく利用出来たらと思い、玄関と廊下と脱衣室に型ガラスの小窓を設けました。
夏には基本的にエアコンが動いていると思うのですが、念のためというか予備として準備しています。
階段
この家の階高(1階の床〜2階の床)は、265cmでかなり低く抑えています。
段数を14段にしたので、1段あたりは19cmになります。
わずかですが通常よりも小さくなっています。踏み面も24.5cmでわずかに大きくなっています。
回り階段の下に踊り場もしっかり設けました。
何の変哲もない階段ですが、"少しでも安全に"、という思いが入っています。
夕日テラス
寝室の隣りに設けた物見台風のテラス。
周りの家たちの隙間から夕日が望めそうだったことと、車寄せの屋根の上に上がれて楽しそうだったので提案させてもらいました。
手摺り壁のあるなしは、気持ちよさに大きく関係します。
袖壁を付けて、裏のお宅から見えにくくしています。
玄関
玄関の土間部分に小さな収納を設けました。
土の付いた野菜をもらうので、その保管場所として使います。
階段下を利用して建物の面積が増えない(コストを抑える)よう考えた配置です。
扉は白いものにして存在感を抑えています。
ウォークイン型の玄関収納は面積的に難しいので、大きめな家具の下足入と階段下を利用した靴収納で対応しました。
一般的に住宅内部の床は、地面から60cm〜75cm程の高さになります。
なので、3〜5段くらいの段差が生じます。
この家の場合は、車寄せでの車の乗り降りと自転車置き場を考慮して、外の段差を少なくし、玄関内部に式台(スノコ)を設けて処理しています。
玄関は半外空間として捉え、仕上げ材料や色味を調整しました。
配置計画
34坪の敷地にまずは2台分の駐車スペースを確保して、それから建物の計画をまとめています。
なんとか5帖分程の植込みを用意して、アオダモやモミジなど数本を植えることができました。LDKのメインの窓前なので、日常で身近に緑を感じていただけます。
また前の道路に季節感や潤いを提供し、近所のコミュニティにも一役買います。
庇
LDKのメインの窓は、外への視線が一番延びるところに設けました。
メインの窓はいつも"日中にレースのカーテンも開けられたらいいな"、と思いながら考えています。
ここは南西の角になるので、夏の強い日差し(熱)を避けるための対策を施しています。
庇を付けて、緑を植えて、日陰をつくります。
高性能のサッシと断熱材だけに頼るのではなく、設計でやれることはしっかり探ります。
外観
敷地面積が小さい場合、建ち姿を意図的に操作するのが難しくなります。雪の降る新潟では屋根の軒を出すことが出来なくなるからです。
屋根のカタチは外観に大きく関わります。
この家は、雪を落としたくない南面(駐車スペース)と西面(植込み)の反対側に屋根を傾斜させています。
狙ったカタチではなく、状況に応じた受け身のカタチになっています。だからといって"仕方なく"ということではなく、"いいなぁ"、"好きだなぁ"と思えるよう工夫をしています。
ちょっとだけ出した薄い屋根とL字型の庇、
その軒裏の仕上げ、
夕日テラスの凹み、
玄関ドアの木枠、
そして、植栽など。
パッと見よりも、時間をかけて愛着が湧いてくれることを期待しています。
設計・本文:渡辺 義行
補佐・撮影:佐藤 拓生
工程---------------
相談~
土地決定:2022年4月~2022年11月
設計期間:2022年12月~2023年5月
工事期間:2023年5月~2023年11月
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