東京都 アクセシブル・ツーリズムは島しょへ(八丈島編③)
モニター3日目は、予備日だったので2日間で行くことができなかった場所をゆっくりと訪れました。
最初に向かったのは八丈島の映えスポット「大里玉石垣」。
坂もあるため車いす使用者は車窓からでも楽しめますが、記念写真は車から降りて。
視覚障がい者は整然と積み上げられた玉石には是非触れていただき、玉石垣の歴史を聞いてもらうと良いと思います。(バリアフリートイレなし)
江戸時代には難所大坂道といわれた「大坂夕照」は八丈八景にも謳われ、今は道路も整備され夕日スポットとして有名です。夏の時期は海の向こうの八丈小島のあたりに日が沈みます。
しかし視覚に障がいがある方にとっては、このきれいな景色は言葉だけではほとんど伝わりません。全盲の片岡さんは、同じ海の景色であれば初日訪れた南原千畳敷海岸で強風に煽られた波しぶきを浴びながら溶岩の上を歩いたり、底土海岸のように波打ち際まで歩いていける体験のほうが五感で海を感じることができると言われます。
空港に向かう前に急きょお願いして見学させてもらったのが初日の夜に飲んだ島焼酎「情け嶋」の蔵元「八丈興発㈱」。
工場に入ると焼酎の発酵で温度が上がっているタンクから漂う焼酎の香りに包まれ、丁寧な説明で焼酎の製造過程が良く理解できました。
全国にある酒蔵、酒蔵見学として観光で訪れることができる蔵元も多くありますが、最初は「車いすの方は難しいかも・・・」と言われることが少なくありません。
そもそも酒を造る工場なので、車いすで移動することを前提に作られていないからです。
ただ、私が各地でご案内した経験から言えば台車や機械類を移動させるため比較的フラットで、洗浄で水を流すための溝も車いすで十分通れる場合が多く、床に置いてある道具や箱類を少し動かすだけで車いすでも見学できる場所がかなりあると感じています。
普段聞くことのない製造過程や酒の香りは、視覚障がい者にも楽しめる観光スポット。
ユニバーサルツーリズムの視点で一度酒蔵内を確認してみると良いと思います。
今回も試飲も含めて、皆さん大満足でした。
最後にご紹介するのは、八丈島ならではの食材「明日葉」です。
滞在中、3日間でほぼ毎食なんらかのカタチで明日葉を口にしてきました。
しかし、どこで生産されているのか?どのように生えているのか?など、明日葉のことをほとんど知らぬまま3日間過ごしていました。
島の人は「そこらへんに生えていて、島の人はわざわざ買わない」と言われるので、土から生えている明日葉を見ることができないかと探し、最後にやっと教えてもらって見つけることができました。
片岡さんも念願の明日葉に触れることができました。一見、そこらへんの草ですが香りは明日葉!
島の人にとっての日常が島外の人にとっては興味津々の観光素材、全国の観光地でも同様な素材はたくさんあるはずです。
〈まとめ〉
東京都の島しょ(伊豆諸島、小笠原諸島)は、八丈島でも観光で使えるリフト付バンは1台しかないというくらい二次交通を含めてすごくバリアフリーが整っている観光地というわけではありません。
しかし、公共のトイレはバリアフリートイレですし、何軒かの宿泊施設はバリアフリー改修をされ、観光施設も多少の段差を越えれば車いすでも見学できる施設は多くあります。
なにより食や島の人柄は誰もが楽しめるユニバーサルツーリズムです。
最後に空港で撮った2組のモニター、古屋ご夫妻、片岡ご夫妻の様子で八丈島を楽しんでいただけたことが伝わるのではないでしょうか。
全国の島しょ観光で同様な課題や魅力があてはまるはずです。
『多少の不便もあるけどまずはお越しください!できることはお手伝いしますよ!』の気持ちで、島しょ観光のユニバーサルツーリズムが広がると良いですね!