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一般社団法人 江戸町人文化芸術研究所

vol.22「八百屋お七」について

2023.12.24 22:06


メリー・キリシタンマス!(各方面から怒られる言葉)

「テストに出てくる有名人シリーズ」って、資料も膨大で、勉強、勉強の日々に疲れたので、今回は箸休めとして、クリスマスらしくロマンチックな恋愛ものの「都市伝説」をば



この「八百屋お七」という名、教科書には絶対載ってませんが、江戸時代にはかなり有名だったようで。なんで有名かってーと、、放火で。そう、放火。放火犯なのよ八百屋お七。(いきなりもうロマンチックでない)



「なんでもね、1683年1月に起きた「天和の大火」で、親と共に焼け出された八百屋お七は、正仙院って寺に避難したんですって。まあ、火事の多い江戸では、よくある話よね。けど、寺での避難生活の中で、お七は寺小姓「生田庄之介」と恋仲になっちまった、って言うじゃない? やがて八百屋が建て直され、お七一家は、寺から家に戻るわけだけど、お七の庄之介への想いは募るばかり。そこで「もう一度自宅が燃えれば、また庄之介がいる寺で暮らすことができる」と考えたお七は、庄之介に会いたい一心で、自宅に放火したんですって! やーねー、怖いったらありゃしない! 鎮火後に、お七は放火の罪で捕縛されて、鈴ヶ森刑場で火あぶりにされたらしいわよ〜」


「あら、アタシが聞いた話じゃね。火事で避難した先は、円乗寺って所で、恋の相手は、旗本の次男で美男の「山田左兵衛」だったわよ? その後に、素性の悪い「吉三郎」って男が、自分が博打に使う金銀を要求する代わりに、二人の間の手紙の仲立ちをしてたんだけど、火事場泥棒目的で、お七に「また火事で家が焼ければ左兵衛のもとに行けるぞ」とそそのかして、放火の仕方まで教えたのよ。火事の直後に、吉三郎は捕まって「火を付けたのは自分ではなく、八百屋お七だ!」と言い、お七もそれを認めて、捕まっちゃうの。そんなお七を、お奉行様が哀れに思って「15歳以下ならば、罪を一段引き下げて、島流しにせよ」と命じたんだけど、ひとり処分されるのが気に食わない吉三郎が「お七が16歳の証拠があるぞ!」って証拠の手紙を提出し(その中に16歳という記述があった)から、お七も、吉三郎もろとも火あぶりにされた、んじゃなかったかしら?」


「え、やだねアンタ達。どっちも違うわよ? 確か、お七が捕まった後、お奉行様が「若く美しい、悪事などしそうにない娘が、なぜ放火などしようとしたのか?」と尋ねるんだけど、お七は、庄之介に迷惑かけまいと、庄之介の名前は一切出さず「恐ろしい男達が来て、火をつけるよう脅迫し、断れば害すると言って打ちつけるので」とか、要領の得ない話ばかりするもんだから「これでは助けることは出来ない」って、市中引き回しの上、火あぶりになる、ってて話じゃないのさ? それで、市中引き回しの時に、せめてもと、綺麗な振袖を着させてもらえた、って所が泣きポイントでしょ!」


「違うわよ! 何言ってんのさっ、このブス!」

「はぁ? つーかババアが悲恋ものを語んなよっ!」

「キーッ!! お前を燃やしてやろうかっ!」



てな具合に、色々なバージョンで語られる八百屋お七の物語は、やがて都市伝説の域を超えて、井原西鶴の『好色五人女』とか、人形浄瑠璃の『伊達娘恋緋鹿子』とか、歌舞伎の『松竹梅雪曙』とか、様々な作品に進化してゆく。その過程で、お七が放火する代わりに「火の見櫓(やぐら)」に登って、鐘を打つ内容に変わったり(←それでも大罪らしい)サブキャラが「伝説の宝刀を巡って争うエピソード」が加わったりと、どんどん変化。もはや、元が、どんな話だったんだか訳分からん状態に。



どこまでが史実なのよ?と調べてみても、何なら本当にあった話かどうかも定かじゃないときてる。wikiさんの説明によれば↓


よく知られているにもかかわらず、お七に関する史実の詳細は不明であり、ほぼ唯一の歴史史料である戸田茂睡の『御当代記』で語られているのは「お七という名前の娘が放火し処刑されたこと」だけである。それだけに後年の作家はさまざまな想像を働かせている。



と言うことで、悲恋の話なぞ、ついぞ出てこん。それどころか、お七の家が八百屋だったのかすらも、それを裏付ける確実な史料はないんと。えー!じゃあ全部ただの創作なんかい!とズッコケてしまいそうになるが、↓


しかし、大谷女子大学教授で、日本近世文学が専門の高橋圭一は『御当代記』は、後から書き入れられた注釈を含め、戸田茂睡自身の筆で書かれ、少なくとも天和3年「お七」という女が、江戸の町で放火したということだけは、疑わなくてよいとしている。

また、お七処刑のわずか数年後、事件の当事者が生きているときに、作者不明なれど、江戸で発行された天和笑委集と、大阪の西鶴が書いた好色五人女に、違いはあれど「八百屋の娘お七の恋ゆえの放火」という点で一致しているのは、お七の処刑の直後から、東西で広く噂が知られていたのだろうとしている。

お七に関する資料の信憑性に懐疑的な江戸災害史研究家の黒木喬も『好色五人女』が、お七の処刑からわずか3年後に出版されている事から、少なくともお七のモデルになった人物はいるのだろうとしている。もしも、お七のことがまったくの絵空事だったら、事件が実在しないことを知っている人が多くいるはずのお七の事件から、わずか3年後の貞享3年に、あれほど同情を集めるはずが無いとしている

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/八百屋お七


だそうだ。wikiさんのページ ↑ を見ていただければ分かることだが、とにかく作品化された数が半端でない。全部読むのはエグすぎて無理である。漫画にも、映画にも、テレビドラマにも、音楽作品にまでなっとる(音楽てどゆことw)


しかしまあ、これだけ様々なバージョンで描かれた物語も、そうそう無いんではなかろうか? 口裂け女だって、こんなにバリエーションないと思われ。しまいには、落語版だと「死後にお七は幽霊となり人々を悩ましたあげく、武士に手足を切られて1本足になるだとか」もうやりたい放題だなw って感じであるが、ともあれ、八百屋お七さん大人気すぎ。


死んだ後に自分がすっごい有名人になってるの知ったらビビるであろう人ランキング」で、ゴッホと競る勢いである。やっぱ放火はいかんね。何百年も劇にされるとか、罰がエグいよ日本はw 恋心は燃やしても、家焼いちゃダメよダメダメ、火の用心、火の用心。


という、ロマンチック(ではない)な、熱々カップルの都市伝説でしたw