「立つ女たち ~女性議員15%の国で~」
●こんな、立候補のかたちがある!
地方議会選挙に、自身が実感する課題を解決したいとの思いを持つ、無所属の女性が選挙に立ち、見事当選するまでを伝えている。
本業と併行し、土日や平日の夜はプライベートを優先し、サポート活動は同級生や友人に応援を頼む。
そんなサンバン(地盤、看板、カバン)によらず、「新しい(正確にはほとんどない?)」選挙活動を繰り広げる。
街頭に立って名前を連呼することはない。地元の会合にマメに足を運び、顔と名前をアピールすることもない。
ネットを中心に、身近な課題解決法を発信し、地域のゴミ拾いを行う。
街頭でのスピーチは、課題に直面する「その有権者=主にはワーキングマザー」に声を届けるべく場所を選び具体的な内容を盛り込んだ内容だ。
●「せんきょってえのはね」おじさんの登場なるも・・・!
そんな彼女たちに「教えてやるおじさん(議員経験者や元議員のシニア男性陣)」が訪れる。
「時代はかわったからねー、あたらしいやりかたってのもあるよねー、だけどやっぱり選挙は、いかに人におぼえてもらうかだしねー、最後は人と人なんだよねー」的な「アドバイス」をする。
従来型の、滅私的な活動こそが当選するための選挙活動なのだよという断固とした考えがあるようだ。
もちろん、ゆらぐ。
だって経験者だし、自分は初めてだし。
だけど、先輩無所属議員が開催する月一回の、同じ立場の人同士のオンライントーク会で「やっぱりブレずに自分のやり方で!」と立ち返るのだ。
そして見事、当選!お一人はトップ当選だった!トップ当選した彼女は、窓の外を走る選挙カーからの名前連呼活動を片耳で聞きながらネットで自身の考え方を発信する選挙活動を中心におこなっていたそうだ。
●多様な立場からの質問
上映後の質疑応答には、民間大手メディアOBという男性から、「83年の選挙でも、まったく同じ流れがあった。無所属が新しい風を吹き込み時代は変わっていくという気運が生まれた。しかし結局もとに戻った。これと同じことが繰り返されるんじゃないか」という質問。ご自身の経験から、ある意味無力感もおぼえているのだろうか。
これに対して、参加者の一人で現役記者の女性から「1983年ごろと、女性たちのありようは確実に変わっている。いわゆるお茶汲みではない働き方で職場の中心位置でバリバリ働く、家庭では妻、母である女性が多い。だから直面する問題を真摯に訴える候補者に賛同の人たちが増えたのではないか。
また、現役大手メディア制作者の一人からは(いかにも)現在の映像メディアの視聴率と直面していることがうかがえる「なんで国政を取り上げなかったのか」という質問が出る。
これに対しては、登壇する制作者側から個人的なことは政治的なこと、と昔から言われているように、変革は、地域の身近な課題にアプローチし解決していくことからひろまっていく。そうした点でも地方選を取り上げる意味は大きいと考える、との応答。
ネット中心の選挙活動だとネットユーズOKの人とそうでない人たちの分断が生まれることを懸念する、という意見に対しては、ネットユーザーとそうでない人、という分断という切り分け方は必ずしも適切ではないと考える。政策中心の発信を行う選挙活動と従来型の選挙活動という違いで、有権者が判断しているのではないか。
また新しい選挙活動といっても、オールネットというわけではなく、政策チラシをポスティングしたり、定期的な地域清掃活動もおこなうなど必要と思う街頭活動は行っていた。
●当選、その後、そして作品にこめたメッセージ
映像は、当選したところまでだった。
トークセッションで掲げた課題は実際どうなったかを議員に問うと、概ね実行(解決)されたとのこと。
また、実際に議会で答弁に立つ前の自治体職員との日頃の対話の必要性も実感したそう。
資金も地盤もなくても、議員を目指すことはできる。
そう女性議員たちは口々に言っていた。
小さなひとつが実現したことが突破口となり、地域の他の課題への取り組みへの施策化を感じさせるワクワクするような発言だった。
選挙。
大切なのは、当選すること、じゃなくて議員として何をすること、なのだよな、とあたりまえの基本に立ち返る。
この映像は「自分も議員になれるかもしれない」と感じる次代の立候補者が増えることを提案するメッセージなのだという。
もやもやや憤りを、市府町村区レベルで解決していきたいと少しでも思うなら勇気をもって一歩踏み出してほしい、という気持ちが伝わってきた。