左脳で右脳をマネージして神秘の野生の力を解き放ちたい
大きな試合の前に、テーマを決めることを大切にしている。前回5月のマレーシア・ペナン島100kmは「アルケミスト」より「今を精一杯集中」して駆け抜けたい」をテーマに、 その時々の環境を受け入れ続け、前半の灼熱・後半のジャングルでの自分との戦いを制して自分の能力以上の力を発揮して戦うことができた。今回は「極限力~Beyond Self~ (山本 晃市)」を自分なりに解釈をしたテーマ。「左脳で右脳をマネージして神秘の野生の力を解き放ちたい」
◯本を読んで学んだ、ウルトラトレイルにおける脳の役割
超長距離のレースは筋力・走力以上にコースでの極限状態に耐えうる「メンタリティ」が求められる。トレイルでは心理学的にも脳科学的にも、左脳で「ロジカルにレースの戦略」を組み立て、右脳で「感情を表現」する。レースとなれば一般的に大切なことは戦略担当の「左脳」であると思われるが、極限レースの環境下において限界点に達した時、圧倒的に「右脳」に秘めた第六感である「神秘の野生の力」をどこで引き出せるか?が鍵になる。
100km以上山の中で戦うと、確実に身体的にどこもかしくもがレース中におかしくなる。全身が痛いし、内臓気持ち悪い(吐く)し、時には幻覚・幻聴で頭すらおかしくなる。そんな時「弱音を吐く自分」「強気に耐える自分」がずっと同居しており、環境によってその「自身の姿」が交互にやってくる。特に弱気になる時は「予定外のマイナスポイント」が連続して起きる時であり、この時はほぼ「自分の予測が足りなかった時」。つまり、身体とコースの理解をした上で左脳で「準備をする」時間が足りなかった時である。昨年の120kmのレースなのに、まさかの40km地点で脱落した上州武尊が良い例かな。(すげー顔してる。)
「神秘の野生の力」を引き出すために大切なことは、左脳からの「ギリッギリにストレッチした戦略・指令」 に対して、環境を全て受け入れ、自身の力で100%のアタックをし続けた延長戦上に、覚醒したように初めて現れるものである。その時、どれだけの身体の痛みも全て飛び、何が起きても「ポジティブに捉え」、超超越的に自分自身の能力を超えることができる。(野生の鹿みたいな感じ。)
◯今までの自分を信じて、神秘の野生の力を解き放つ
2018年夏は週5,6のトレーニングだけではなく、オイシックスといった食生活サービスやfitbit・fincを使って睡眠まで理解、定期的な測定や大会で身体を知り尽くしてきた。今までに100kmのレースは10回以上出てきたし、3000mの山も何度もアタック(写真の薬師岳)してきた。左脳で「ギリッギリにストレッチした戦略設計」は今の自分には立てることができた。あとは、前半で出し切らないように後半で着実に実行するだけ。
今回の「2018 MesaStila Peaks Challenge 100km」(7,748m)距離に対する累積標高だけではなく、標高700m弱をスタートしてから標高3142mのMt.Merabuを3回アタックを始め、合計5つの山にアタックする日本では味わえない極限レース。「Grandslam Ultra Indonesia」シリーズ全4戦の1戦として、東南アジアを中心に世界の12ヵ国から実績を持つランナー54名(100kmのカテゴリ)だけの変態だけのレース。
もう昔のように、未知のレースを怖がったり、恐れたりすることはない。やることは全てやりきった。左脳が立てた、ギリッギリの「戦略を身体でマネージ」しながら、右脳が持つ「神秘の野生の力」をレース中盤〜後半の最後の3142mへのアタックのタイミングで引き出し、覚醒した自分自身を地球に表現したい。