「なぜ働き方改革なのか 企業の生産性を上げる ワーク・ライフ・バランス」を開催しました
10月2日(火)爽やかな秋晴れのなか、太田市女性活躍推進連続講座が開催されました。
「なぜ働き方改革なのか 企業の生産性を上げる ワーク・ライフ・バランス」と題し、労働・子育てジャーナリストで、NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事を務める、吉田大樹さんにお話いただきました。
吉田さんは企業通信社で記者として働き、その後NPO法人ファザーリング・ジャパンの代表理事、内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」メンバーなどを経験。現在はジャーナリストとしてYahoo!ニュースなどで記事を配信するほか、都市と地方を結び、父と子のさまざまな体験活動の機会を提供するグリーンパパプロジェクトを運営しています。
そして吉田さんは、三児のシングルファーザーでもあります。
8年ほど前にシングルになって以来、家族全員分の食事作りや、入学グッズを作るための裁縫、すべて自分でこなしてきました。
そんな吉田さんは、こう言います。
「すべての根源は、命あってこそのもの。仕事も子育ても、命と健康があってこそ楽しめる。働き方改革のいちばんの主軸は、仕事をし過ぎることで命や健康が脅かされてはいけないということだと思っています」
そして、こう続けました。
「父親の立場で言うと、子どもがいたら簡単に死ねません。そして、子どもの成長は本当に早いです。仕事をしながら、健康に、家族と向き合う。働き方改革の側面には、そんな大切なテーマも含まれています」
その後、吉田さんがさまざまな(衝撃的な!)データを見せてくださいました。
男性が目の当たりにするべき
いまの社会の現状
「週間就業時間60時間以上の雇用者の割合の推移」というグラフを見ると、40代男性が15.2%、30代男性が14.7%で、1日4時間残業していることが分かります。
18時終業だとすると、22時まで仕事をしていることになり、そのような男性に「家事・育児をしろ」と言っても到底無理です。
また、「共働き等世帯数の推移」を見ると、平成10年頃を境に男性のみ働く世帯よりも共働き世帯のほうが多くなり、その後共働き世帯が増加の一途を辿っています。
女性の就業率も、この10年で15%以上増加。
一方で、「6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連時間」というデータを見ると、主要先進国のなかで日本の「夫」が圧倒的に少なく、日本の「妻」が圧倒的に多いのです。
このことから分かるのは、日本では働く女性が増えているにも関わらず、男性の働き方・働く時間は変わらず、その分の家事・育児の負担が女性にかかっている、ということです。
「ところで、“女性の社会進出”という言葉がよく叫ばれていますが、今まで女性は社会にいなかったのでしょうか?一方、“男性の育児参加”という言葉もよく聞きますが、男性は育児の“参加者”でよいのでしょうか?
女性は元々社会に内包されている存在で、“女性の社会進出”というのはおかしい言葉です。
この場合の“社会”というのは、“男性社会”を指していて、現状は男性社会に女性が合わせて働き、家事・育児も背負っているという状況なわけです。男性が“育児参加”している場合ではありません」
…吉田さんのこのお話に、首をぶんぶん縦に振りながら聞き入っていました。
過去にない少子高齢化社会に突入する日本は、「子育てしやすい社会」をつくることが急務。「子育てしやすい社会」をつくることは、「仕事をしやすい社会」をつくることでもあります。
この相互関係は切っても切り離せず、「子育てしやすい社会」というのは、女性にとってだけでなく、男性にとっても必要な環境です。
ワーク・ライフ・バランスを
考える
「生活満足が与える良い影響」というデータを男女別で見てみると、男性は「経済的なゆとり」や「交友関係」が高く、女性は「健康状態」や「夫婦のふれ合い」が高いそうです。
また、「生活から仕事への肯定的スピルオーバー(余波)」というデータでは、男女共に生活(プライベート)が充実していればしているほど、仕事のパフォーマンスも職務満足(キャリア)も高まるという結果が出ています。
単純に仕事に費やした時間で評価するのではなく、生活を大切にしながら成果をあげる(そして健康でいる)ことを評価すべき時代に来ているわけです。
「そのような新しい価値をつくるために、まず社員に新しい時間をつくってもらう。結婚記念日に休暇をとってもらうとか、子どもの誕生日に休暇をとってもらうとか…そんな企業の視点が広がれば、それが少しずつ社会の視点になっていきます」
と、吉田さんは言います。
「僕も必要に迫られて子どもの入学グッズを作ったけど、それまでは自分が作ろうなんて思ったこともなかったし、奥さんに任せていました。いざ自分が作るとなったとき、もちろん誰かプロの方にお願いすることもできましたけど、“これは子どもにとって一生に一度のことだ。男性にはできないなんて、ただの決めつけじゃないか”と思い、自分で作ることにしました。
これはささいな例ですけど、“男性にはできない”“男性がやることじゃない”“女性がやるべきことだ”という決めつけが、社会にはたくさんはびこっている気がします」
と、吉田さんは言います。
「前例がないことで決めつけず、何かしらの突破口をつくってほしいと思います。企業でも、家庭でも」
女性が本当の意味で活躍できる環境が整ったとき、
それは男性にとっても働きやすく健康でいられる社会であり、
子どもたちももっと幸せになれる社会なのかもしれない…
…と、吉田さんの話を聞いて思いました。
「働き方改革」は、企業にとっても家族にとっても、大切な改革だったのです。
ライター:ento(株) 岩崎未来