昔子供だった大人のあなたへ「100万回生きたねこ」
昔子供だったあなたへ大人の絵本のコーナーです。
(これは2023年11月30日fmGIG「お昼にほっこりどーどすか」で放送した内容です)
今週はベストセラーの佐野洋子作「100万回生きたねこ」をご紹介します。
ベストセラーなのでタイトルはご存じの方も多いと思います。
この絵本のすごい!と思うところは死ぬことがハッピーエンドなのです。
ちゃんと死ねてよかったね・・・と思う作品のなのです。
そこが他のハッピーエンドの作品と違う部分なのではないかと思います。
と、結論から先に申し上げてしまいましたが
あらすじをお話させてください。
100万回も死んで、100万回も生きたねこのおはなしです。
王さまやおばあさん、どろぼうなど、様々な人たちがこのねこを飼ってかわいがってきましたが、
ねこは誰のことも好きではありませんでした。
あるときねこは誰のねこでもない野良猫になりました。
どんなめすねこもねこのお嫁さんになりたがりましたが、ねこは誰よりも自分のことが好きだったので、
お嫁さんをもらいませんでした。たった1匹、ねこに見向きもしない白い美しいねこがいました。
ねこが自慢をしても、白いねこは「そう」と言うだけ。
ねこは自慢するのをやめて「そばにいてもいいかい」と白いねこにたずねました。
白いねこは「ええ」といったので、ねこはいつまでも白いねこのそばにいました。
白いねこは子ねこをたくさん産みました。
白いねこと子ねこのことが自分よりも好きになり、ねこはもう自分を自慢するのをやめました。
子ねこたちが大きくなり、白いねこは年をとりました。
ねこは白いねこといっしょにいつまでも生きていたいと思いましたが、ある日白いねこは、
ねこのとなりで静かに動かなくなっていました。
ねこは初めて泣きました。ねこは100万回泣いたあと、動かなくなったあとはもう生き返りませんでした。
・・・というお話です。
ねこは白い猫を愛し、初めて愛しいと思う気持ちや失いたくない気持ちを知りました。
そして、自分よりも大事と思う気持ちもです。
そのように、誰かを愛すことができるのが本当に幸せであることを教えてくれます。
どんなにお金や名誉があったとしても、自ら他人を想う気持ちや大切にする気持ちには
変えられないのを再認識させられます。
この「100万回生きたねこ」は前半は独り善がりな愛を与えられてうんざりしていたねこが、
後半は自ら愛を与える喜びを知る、そんな猫の転生を柔らかなタッチの挿絵とことばで綴られています。
最後になぜねこは生きかえらなかったのでしょうか?
大好きな白いねこと、子ねこたちに囲まれた人生に満足したから?
白いねこに出会って、初めて「いつまでも生きていたい」と生を意識したことが、
生き返りのループを断ち切ったのかもしれません。
やわらかいタッチで綴られる絵を見ながらぜひ読んでいただきたい絵本です。