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精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

「消えてなくなりたい。」と言われたら

2023.12.14 11:16



こんにちは、

精神科医諸藤えみりです。



10代、20代の思春期の方を

診察していると

「死にたい。」

と、言われることがあります



私のすることは

相手の気持ちを

受け止めるだけです。



なぜなら

死なない答えや生きる理由を

提示する必要はないからです。





「死にたい」

と言われる方がいます。

高校生です。

(特定されないよう配慮しています。)



人との

コミュニケーションがしんどい。

学校にも家族にも居場所がない。



考えたら

死にたくなると言います。



「前は死んだらいけないと

踏みとどまっていた。

でも、最近は

パッと死んじゃいたい。」

と言われます。



「死にたい」は

操作性が高いワードです。



目の前の方が

「死にたい。」

と言った場合、

ほっとけませんよね。



精神科の外来では

本当に自殺する危険性が

あるかどうかの見極めが

非常に大切です。



10代20代の「死にたい」には

「死にたいくらいつらい。

でも死ぬ度胸はない。

この苦しみを分かってほしい。」

が隠れています。



つらい気持ちを

「死にたい」でしか表せない。

苦しい気持ちを言語化できない。



だから

「死にたい。」

になるのです。





「死にたい。」

と言われても

私は右往左往しません。


動揺してはいけない。



10代20代の

死にたい気持ちを

受け止めて、

気付いたことがあります。



彼らにどんなに

「死んではいけない理由」

「生きる意味」

を提示しても納得しないのです。



たとえ

ブッダがこの世に再度生まれ、

彼らに生きる意味を説いても

納得しないと思います。



そもそも

生きる答えは

彼らが自分で見つけるもの。



他人から与えてもらう

ものではありません。



私は彼らの苦しみやつらさを

受け止めるだけ。



気持ちを

受け止めてもらえるだけれも

苦しみは和らぎます。




例えば

極寒の空の下、

裸で放り出されたとします。


同じ境遇の人がいるとしますね。



「寒いね。つらいね。」

と言い合えることで安心します。

1人だとこうはいきません。



「誰かが気持ちを聞いてくれる。

共感してくれる。」

これだけで

心は温まるのです。





私はこの高校生に


『これから大学生になり

社会に出る。


色んな人と出会い

たくさんの経験をする。


あなたと深く繋がれる人は

現れる。

居場所は必ずできる。


今はつらいかもしれないけれど

たくさんの可能性があるんだよ。


私はあなたに

生きてほしいよ。』


の気持ちを込めて


「まぁまぁ、そう言わずに

お酒が飲める20歳までは

生きましょうや。


死ぬのは

ビールのおいしさを味わってから

遅くないですよ。


あっ、

ピザパーティもオススメ。」

と言う。



高校生

「先生、

そう言って僕が20歳になったら

次は30歳って言うでしょ?」



私「バレた?笑

この作戦で60歳まで粘れないかと

思ってる。」


(この方は笑うだけで納得せず。

ビールじゃ納得しないよね~。)




多分

次の外来でもこの方は

「死にたい」と言う。


同じような日が続く。



でもいつか

彼が大人になって

ビールを飲んだとき


「そういや昔、

えみり先生がなんか言ってたな。」


と振り返る日が来る。



きっと来る。