10月の小学校のおはなし会
にぐるまひいて
ドナルド・ホール 文 バーバラ・クーニー 絵
10月、家族全員が作った1年分の生産物を荷車に積んで、父さんは町の市場にでかけます。売った品物の代金で必要な品を買い、また新しい1年の生活がはじまります。自然のサイクルの中での生活が語られます。
「自給自足」という言葉があります。今もうこの言葉はほとんど使われなくなりました。何でも自分たちで作るのではなく、買えば済むという便利な世の中になってしまったからです。でもそれで私たちは便利な生活を手に入れましたが、逆に大切な何かも失いました。それが何かを、読む人それぞれがそれぞれに考えさせられるお話です。
このお話は作者のドナルド・ホールという人が、いとこから聞いた話です。そのいとこは小さい頃ある老人から聞き、老人は違うもっと上の老人から聞きました。長い間、人から人へと語り継がれてきたお話だったのです。バーバラ・クーニーの絵も素朴な中にしっとりした情感を漂わせていてたまりません。しかし残念なことに彼女は、素晴らしい絵本をたくさん残して2000年に亡くなりました。この本は1980年にコルデコット賞を受賞した作品です。
何でもない普通の生活。この絵本に変わった話や面白おかしい話は出てきません。出てくるのは昔こんな生活があった、という何でもない普通の話です。それが木の板に絵の具で描くというアメリカに残る古い技法で描かれています。どうして「普通」という言葉をたくさん使ってこの絵本のことを説明するのかというと、今はこんな「普通」がもう普通ではなくなっているからです。もうこんな生活はどこを探してもないからです。すっかり「特別」になってしまった生活だからです。そんな絵本の中にある世界をお楽しみ下さい。
今回は紙芝居バージョンでお届けします。
最後は手作り工作で
「パタパタびょうぶ」を作ります。
どんな作品ができるでしょうか!
お楽しみに!