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オムツと涙とハーバード

分断のアメリカ:反対側の意見を聞く難しさ。

2018.10.08 04:47

カバノー氏が最高裁判事に就任することにつき、

上院の採決で承認された。


これで最高裁は共和党系が過半数を確保したことになる。

同級生内では「がっかり」と言った雰囲気が漂っていた。


***


先日、日本のTV局に元勤めていた友人の紹介で、

ハーバードが現在受けている訴訟に関連し

「アファーマティブ・アクション*」の是非について、

(*入学者数を人種等で調整するいわゆる、マイノリティ優遇措置)

在ハーバードのアメリカ人たちがどう考えているかを、

メディアを通じて日本に伝える機会があった。


「在ハーバードのアメリカ人たちがどう考えているか」は

正直、この特定の話題であまり友人達と会話したことがなかったので、

自分の興味もあって、周りの人々にインタビューしてみた。


1日で10人程度に聞いた結果は、

アジア系か否かに関わらず、

略みんなアファーマティブ・アクションに「賛成」だった。


というのが主な理由2点だったと思う。


アファーマティブ・アクションなんて必要ないのが理想だけど、

現実はそうじゃないよね、、、と。


したがって、

そういう前提で日本の皆様にもその結果を発信したのだが、

前提として気になっていたのは


「この意見はハーバード内・マサチューセッツ内の

極めてリベラルな環境にいるからなのか?」


ということだった。


意見をくれた友人の中には、

今回の訴訟に関してもアジア系学生が差別を受けていると訴える以上に、

アファーマティブ・アクションを無くしたい右派の白人層が動いているよね、

と指摘した人もいた(前述のFT記事でも保守派最前線と指摘されている)。


そこで、改めてアジア系アメリカ人のVちゃんに電話して、率直に

「これってハーバード、マサチューセッツ州で聞いてるから

リベラルな答えが返ってくるのかな?

今の所反対意見言ってくれた人いないんだけど、

同級生でも反対の意見の人いるのかな。。。」 

と聞いてみた。


そしたら、

「うん、ハーバードだとスーパーリベラルだから偏っていると思う。

反対意見が知りたかったら、共和党支持者を探すのがいいと思うけど、

あんまり出てこないよね、この環境で。

あ、でも元軍人系の人たちは保守が多いかも。」


ということで、

翌日、カリフォルニア出身の元軍人のP君、

ニューヨークの警察官のB君と

Vちゃんと4人でランチすることに。


***


P君、ビンゴでした。


「僕は保守だよ。

アメリカにいると(1)親からの影響(2)大学の影響で政治感が決まることが多いよね。

僕は親も保守だし、自分もウェスト・ポイント(超エリート陸軍士官学校)にいる間に

思想を形成した気がするよ。」


とのこと。


彼は、アファーマティブ・アクションについても、

公平な競争ではないのでフェアじゃない、と反対だった。


貧困層への手当ての意義は理解するが、

大学入試という最後のポイントで引き上げるのではなくて、

それ以前の段階で機会の平等を担保する措置をとるべきではないのか、との考えらしい。


そして、彼はリベラルが圧倒的に強いハーバードでの苦労を語ってくれた。


「リベラルの人は「言論の自由」と声高に言うけれど、

自分と合わない意見の人についてはシャットダウンしてるよね。

トランプ含めて自分と逆な意見も、言論の自由の中にあるはずなのに。

結構、偽善的だよね、それって。

だから僕は自分の意見はあまりここでは言わないね。」


「時々、授業で教授達の左バイアスのある発言に気分を害する(offended)時があるよ。」


「カバノーの公聴会にしたって、

もちろん女性が声をあげたことは賞賛すべきだけれど、

同じく男性の声も聞かなきゃいけない。

司法の論理から言ったら推定無罪だよ、本来は。

それなのに、感情レベルで逆になっている。

カバノー氏も公聴会であまり上手くない発言をしてたとは思うけど、

本件を政治的に利用しているセッティングそのものに僕は腹が立ったね。」


***


ハーバード内では、

トランプ大統領が選ばれたことを

まだ本質的に受け入れられていないリベラルエリートが結構いる気がする。


「あれは間違いだ」と。


しかし、現実には二極化してしまったアメリカがあって、

確かにトランプ大統領を支持している人々がいるのである。


ミネソタで育ったVちゃんは、

「アメリカを理解したいと思ったら、

ハーバードにいてもダメだねー。横断旅行しないとね。

南部も、中西部も、ラストベルトも、広い農地も見てアメリカだよね。」

と勧める。


私もカリフォルニアに中学生の時住んでいたし、

ビジネスではニューヨークの人々と常に仕事をしていたが、

いずれも、結局、上澄みのエリート達としか交流していないのである。

Hillbilly Elegyみたいな環境を私は知らない。


今回のインタビューをきっかけに、

なかなか組織内にいると見えてこない「反対意見」と

アメリカの分断を少しだけ垣間見ることができた。


そう、多分、これだけ盛り上がっているカバノーの件についても

冒頭の「がっかりと言った雰囲気」、、、、は全体を示していないのだ。

廊下ですれ違った時や、WhatsAppや、Facebookでは発信しない

静かな保守の皆さんが同級生にもいるに違いない。


***


ケネディ・スクールでは、

前回の中間選挙の学内投票率は有権者の16%と

かなり低かったらしく、


今年は「我々が投票しなかったら誰がする!」と言う

危機感を持って投票率90%を目指して活動が活発化している。


どういう結果になるだろうか。

楽しみである。