Evidence Based Crinical Reasoning by Physical Therapist(理学療法士によるエビデンスベースドの臨床推論)②
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
前回から、理学療法士の診断、クリニカルリーズニングに関して書いています。
このシリーズでは下記の項目に関して書きます。
- 『診断』と『クリニカルリーズニング(臨床推論)』とは何か?
- リハ専門職は診断を行うか?
- リハ専門職の『クリニカルリーズニング(臨床推論)』はどんなものか?
- 私が感じていたリハ専門職の『診断』と『クリニカルリーズニング(臨床推論)』に対する違和感。
- 以上を踏まえて、私がどのように考えたか
- 具体的な疾患を例に挙げた説明
昨日は、1.2に関して書きました。 今日は3から書きます。
3.リハ専門職の『クリニカルリーズニング(臨床推論)』はどんなものか?
私が学生時に実習で教えてもらったこともそうだし、この記事を書くにあたって、いくつかweb siteを見てみましたが、内容としては以下の様な感じでした。
①対象となる動作を観察して(時には何らかの操作を加えて)、痛みや機能障害の原因を推測する。 ②その理由づけに解剖・生理・運動学の理論を使う。
私は、この定義と言うか理学療法士のクリニカルリーズニングに違和感がありました。
4.私が感じていたリハ専門職の『診断』と『クリニカルリーズニング(臨床推論)』に対する違和感。
クリニカルリーズニング(臨床推論)の中の、『推論』という言葉が悪いのかも知れませんが、リハ専門職が行うクリニカルリーズニングには確率の要素がありません。
解剖・生理・運動学『だけ』に基づいたクリニカルリーズニングでは、これらの要素が『どの程度症状に影響しているか?』ということがわかりません。人体は複雑ですので、解剖学的には成り立ち得る仮説が、実際には起こらないということが多々あります(煩雑になるのでこれ以上は記載しません(*_*;)
追記:医師が行うクリニカルリーズニングは全く別物です。
私が誤解していなければ、医師が診断する際に行うクリニカルリーズニングは、
事前確率を見積もる
↓
検査をする
↓
事後確率を算出する。
というような流れです。
この際に、検査の特性というか性能を考慮します。具体的には感度、特異度、偽陽性率、偽陰性率などを使います。先行研究でこれらの数値は大まかにでも算出されています。 で、事後確率を算出したら・・・、
- 事後確率が、診断を付けて治療を開始するのに十分高まれば、診断を付けて治療を開始する。もしくはあらかじめ疑った複数の診断名のうちの一つが無視していい程度まで下がればその後は考慮しない。
- 事後確率が十分に高まらなければ、追加で検査を行う。
この様なことを行う際に使うノモグラム
ということをやっています(と思います)。『推論』ではありますが、あくまで数字を使って診断しています。ただし、事前確率の見積もりなどに経験や主観の要素が多分に入りますし、そもそも可能性のある疾患の想起が適切に行えなければ診断のしようがないので、診断能力によって診断の精度や早さのばらつきはあると思います。
追記終わり
長くなりましたので次回に続きます。
今日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史
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