10月9日 二本松市→福島市松川町[元気村農産加工所大豆工房・みさと産直ひろば ディスカバリー]→二本松市(13km)
今日も朝から日差しが眩しい。台風通過後は良いサイクルが続いている。
道の駅 安達にある「二本松市観光案 内板」を見ると、「ほんとの空が 見たいといふ 青い空」という言葉とともに、高村光太郎「智恵子抄」からの詩や「智恵子のふるさと音頭」の歌詞が書かれている。
今日は大学時代の友人、北海道教育大ワンゲルOGの佐藤乃里江ちゃん(旧姓・永山)に会いにいく。
もともと動物や自然への興味が強かった乃里江ちゃんは、教育大を卒業後、宇都宮大学農学部に学士入学した。文系から理系への転身だ。
その時期、実家で有機農家の真似事をしていた自分は、彼女と電話で話したことを覚えている。
そして、それ以来連絡をとっていなかったのだが、7月に札幌で同じ教育大ワンゲルOBの隈本と飲んだとき、彼が彼女の連絡先と近況を教えてくれたのだった。
「福島で味噌を作っているよ」と。
彼女の家は道の駅 安達からは10分ほど。畑と住宅が混在する小径の先に「元気村農産加工所大豆工房」の文字が見えてきた。
敷地内の別の作業場では、体格の良い男性が忙しそうに新米を籾ずりしている。彼に案内してもらい、自宅にいた乃里江ちゃんと再会。子供のような顔は大学時代と全く変わらない。
お互いの大学卒業後のことを話題にしたが、彼女は「味噌を作っている」どころの話ではない。
宇都宮大学農学部を卒業後、郷里の福島で農蚕高校の教師を2年間つとめたが、大豆などの作物学を専攻した彼女は、教師をつとめながら一人で畑を借り、大豆を栽培していた。そして、本格的に生産者となるべく、教師を退職して専業農家となった。
当初、小規模で大豆を作るだけでは充分な収入は得られず、様々なアルバイトも経験したらしい。
現在は、彼女が就農するきっかけを作ってくれた男性と結婚し、男の子が一人いる。旦那さんは従業員を雇用し、大規模(本当に!)な稲作・大豆栽培の農業法人を経営する。
今では旦那さんの作った大豆で、毎朝4時から豆腐を作って販売。
加工から配送作業まで行っており、冬場には味噌も作っている。
それだけではない。
自宅の近くに私営の会員制直売所「みさと産直ひろば ディスカバリー」を開設し、
自分の作った豆腐や味噌に加え、生産者約70名の農産物や加工品など、出荷規制のかかっていないものだけを厳選して販売している。
(営業時間外に店舗を拝見しました)
彼女の話を聞いていると、福島で頑張っている農家の名前がポンポン出てくる。そこには東日本大震災の被災地だった浜通りの人たちも含まれる。
「穀物が、大豆が好き」と教師を辞めて農業に飛び込んだ彼女は、あの震災を経験し、自分の故郷である福島を少しでもなんとかしたいという使命感が加わったのだ。
動物や自然が好きで大らかな彼女は、農業の先輩である伴侶を得、食べ物を通じて消費者と生産者の大きな輪を作り出している。
美味しい昼食をごちそうになり、旦那さんにも農業の話などを伺うことができ、とても楽しい時間を過ごすことができた。
お土産としていただいた豆腐は、乃里江ちゃんの人柄を映し出したように、どこかほんわかとしていて、口に含むと甘さが広がり、自然と目を細めてしまう。そんな幸せを運んでくれる味だった。
東北を再訪するときに、もう一度お邪魔したいと思う。(Y)