ほんのご紹介:『心がつながるのが怖い 愛と自己防衛』
こんにちは。
こころの健康支援室 そらいろのmirineです。
毎週木曜日に更新している本ブログも、今年の更新は残すところあと3回となり、指折り数える段階となりました。
今年もあと半月。
2023年を良い形で締めくくりたいですね。
最近、秋のはじめに購入したまま積ん読になっていた、イルセ・サン著「心がつながるのが怖い 愛と自己防衛(2017 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)」という本を読みました。
英題は「Come Closer」なので、邦題は少し感情の色が入りすぎている印象ですが、内容としては、私たちが無意識のうちに普段使っている「自己防衛の戦略」について書かれています。
著者は、本書のプロローグで、「鈍感になろうとしたり、他者や自身の内面と距離を置いたりする措置を、「自己防衛の戦略」と呼ぶことにします。この言葉は、他者または自身の内面、現実世界に近づかないよう、私たちが意識して、もしくはしばしば無意識にとる行動全般を指します。」と言っています。
そして、本書を通して、人が生きる中で、意識的、または無意識的にとる「自己防衛の戦略」について、どんな意図や方法、効果やデメリットがあるのかを、具体例を挙げながら、分かりやすい言葉で説明しています。
心理学を勉強したことのある人には、本書で紹介されている「自己防衛の戦略」は、聞いたことがあったり、馴染みのあるものばかりかもしれません。
もしご興味をひかれましたら、それほど分厚い本ではないので、よろしければご一読ください。
本書では、自己防衛は二つに分類できるとしています。
一つは、「恐ろしい感情、思考、または願望から自分を守るための自己防衛」で、これは「内的自己防衛」と呼ばれています。
もう一つは、「距離を突然つめてくる他者から自分を守るための自己防衛」で、これは「対人自己防衛」とされています。
「内的自己防衛」は、まさしく精神分析の専売特許と言える分野です。
精神分析を専門とする先生のゼミで末席を汚していた身としては、親しみを感じる内容でもあり、自分自身のこともふり返りながらすらすらと読み進めていました。
自己防衛の戦略の難しいところは、無意識のうちにもそれを使い得るという点です。
自分で一つも気づかないうちに、自分の感情や思考、願望から距離を置く内的自己防衛が完了しているのです。
対人自己防衛は、置いた距離が物理的に目に映るので、内的自己防衛よりもう少し意識しやすいかもしれません。
誰でも多かれ少なかれ、自己防衛の戦略を使って心の世界を平和に保っているものです。
本書を読み進めながら、ふと、というか、つい、というか、こんな疑問が浮かんできました。
自分の内面と距離を置き、他者とも距離を置いている時、私たちはどこにいるのだろう?
「自己防衛の戦略という迷路から抜け出す道は、気づくことです。私たちが自分自身の内面に意識を向けずにいればいるほど、現実に何が起きているのかよくわからないうちに、いろいろな事柄に翻弄されてしまうでしょう。無意識に自己防衛の戦略をとることがあると知るだけでも、私たちの意識は高まり、自分自身の戦略に目を向ける能力が増します。<略>同じパターンに陥って抜け出せなくなる前に、私たちは自身の戦略を調べ、そのうちのいくつかを有利になるように調整したり、あるいはとり除いたりできます。<略>そのような一人ひとりの取り組みが、私たちが自分自身の生命力を感じ、他者と愛でつながるため、まず何より必要な前提となるのです。」
無意識の働きに守られた自分を、自分はどれだけ知ることができているのか。
どれだけ知らずに生きているのか。
知らないことすら知らずにいる自分と、それでも出会いたいと思うのなら、知りたいと思い、探求し続けるしかありません。
時間のかかる、一筋縄ではいかない、大変な取り組みかもしれませんが、求め続けた先できっとその価値を知ることになるのでしょう。
かしこ