消えかけた何かのデータ
2023.12.12 04:12
あの子からレプリカを生み出した。これで私の贖罪は果たされる。
でも、あの子みたいにこのレプリカは聡明ではない。
私はこのレプリカに「音乃(のの)」と名付けた。
ああ、忌々しい。あの子はそんな風に笑わない。
20××/07/06
柊雪影
20歳になった「音乃」が言う。
『姉さんは、いつも僕を見下ろして微笑むんだ。』
気持ちが悪い。幽霊なぞこの世に存在してたまるものか。
カーテンが揺れ、その向こうに見えるネオン街に、「音乃」は魅入られている。
ああ、「詩乃(しの)」。あなたはまだ私を許してくれないのだろうか。
20××/10/21
柊雪影
「音乃」が消えた。きっと「詩乃」が連れて行ったのだろう。
元は一つの魂。それを無理やり切り裂き、「詩乃」を蘇らせようとした罰なのだろう。
もうどれだけ日が経っただろうか。私は老けることもなく、存在している。
これは呪いだ。事故とはいえ業火で「詩乃」を焼き尽くし、「音乃」を生み出した私の呪いなのだ。
『いつでも待っているよ。柊雪影。ぼくの影であり、ぼくの母よ。火鳥之 音乃詩より』
机に置かれた真新しい手紙が忌々しく思えた。
20××/10/21
柊雪影