公演Ⅱ小作品紹介 その2
フレデリック ショパン
バラード 1番 g-mall Op23 の思い出
オイリュトミーとは何ぞや、そして、そのトレーニングを行う学校は、どのような様子なのかを、広く、一般の方々に知っていただけるよう、分かり易く、説明・解説をしつつ、紹介しているビデオが出来上がった。そのお披露目式が、入学して数か月経った頃、行われたと記憶している。
ブルックサイドと呼ばれる建物に、学校関係者のみならず、ビデオ制作にかかわった方々、ほかにも地域の方々など、大勢が集まり、みんなで大画面のビデオを見た後、きれいに飾り付けられたいくつかのケーキに入刀、切り分けられた一つ分のお皿が回ってきて、それをおいしくいただいた、ということくらいしか覚えていない。
先輩方の話からして、どうやら、私たちは、スプリングバレー全盛期を少し超えたくらいの時期に入学したようだった。
「スプリングバレー全盛期」というのは、まさしく、ドロテア・ミアーが監督と演者両方を担って舞台で大活躍されていた頃、と言ってもよいと思う。その華々しい時期が少し、下向き加減になったころ、私たちは入学し、そして、全盛期の頃の先生方の舞うビデオを、憧れのまなざしで何度も再生しては、ため息をつく日々を送ったのだった。
私は同級生3人で、よく、おふざけをして笑いながら過ごしたものだが、その中でも、このビデオは何度も再生され、見ているうちに、たまらなくなって、見よう見まねでオイリュトミーを…とは言えない、単なる猿真似をしながら、休みの夜を過ごしたものだった。
ただ、このビデオにメインで使われているショパンのバラード1番という曲は、とんでもなく、しつこい曲だ、と、当時は思っていた。
この曲は、あたかも、退治し終わった怪物が、一瞬しんとしたところに、おもむろに生き返り、いきなり「わーっ」と脅される…。そんなシーンをほうふつとさせる、と常々思ったものだった。
何十年も経て、ショパンバラード1番をしよう、ということになった。
「あの先生方のフォルムを教えていただければ…。」と思い、小林さんがスプリングバレーで近年先生をされていた史織さんに頼んで、フォルムを入手してくださった。
それを基に、幸田さんが、例のビデオの載ったyou tube動画を何回も再生し、辛抱強く、書きおろしをしてくださって、美しいフォルムとして生まれ変わり、今、私たちの手元にあるのだった。気の遠くなるような動画からの書き下ろしは、オイリュトミーへの並々ならぬ愛情がなくてはできない作業と言っていいと思う。その作業にあたって、パート内の各人の動きや、パート対パートの動き、といった、それぞれの関係性がどのようになっているか、解析は不可欠だったに違いない。私たちが練習を行う際にも、それをアドバイスとして、還元してくだっさっており、いろいろな方々に支えられ、ショパンをすることができ、感謝に堪えない。
…とは言え、噛んでも、噛んでもうまくできないところは今だにあり、尽きることのない目標を指示してくれる曲のように思える。難しいところを先生方はどのようにされているのか、参考にしても学びが多い。
文責:瀬戸清美