靴の記念日
日本では、3月15日が靴の記念日とされています。
今日、私達は毎日当たり前のように靴を履き、生活を送っています。しかし、靴はもともと欧米の文化で生まれたものであり、かつての日本では草履や草鞋が一般的でした。 では、いつから我々日本人は靴を履いて生活するようになったのでしょうか。 実は、その歴史はそれほど深くなく、日本で靴が用いられるようになったのは、今からおよそ150年前とされています。
江戸時代末期に坂本竜馬が靴を履いて写真に写っているのはご存じの方も多いかもしれません。 おおよそこの頃から、日本人にも靴の存在が知られるようになりましたが、実際に靴を履いていた人はほぼ皆無。 外国人が靴を履いているのを見て、「外国人には踵がないから日本人のように草履を履くことが出来ないのだ」と言う日本人もいたとかいなかったとか。
そこから何故日本人が靴を履くようになったのでしょうか。「 靴は外国人が履く窮屈な履物」そのような考えさえあった日本で、何故靴が造られるようになったのか。それは近代軍事国家確立の為でした。長かった江戸時代が終わりを迎え、時代は明治へ。欧米に劣らない軍事国家になる為には、西洋人が使っているような服や靴が必要だと考えられたのです。しかし、いきなり靴を造ろうとしても、もちろん靴を造れる日本人などいません。では誰が靴造りの役割を担うのか。そこで白羽の矢が立ったのが、それまで幕府の御用商人として活躍していた西村勝三という人物です。日本における製靴業の父とも呼ばれています。
明治時代初期、政府要人から靴を献上することを命じられた西村は、江戸末期に幕府がフランスから仕入れた靴を集め、政府に献上しました。しかし、欧米人用に造られたくつであったため、日本人の足に合わず、全く使い物になりませんでした。この事を受け、「それならば自分の手で日本人の足に合う靴を造らなければ」と、西村は立ち上がったのです。
靴を造れる日本人がいない中、外国人の製靴教師を雇い、数人の職人見習いを集めて、彼らに製靴技術を習得させ、日本で初めての靴工場を設立します。それが、明治3年3月15日のことでした。場所は現在の東京都中央区入船3丁目。この場所には今でも靴業発祥の地として石碑が建てられています。
日本における靴文化普及の第一歩とも呼べるこの出来事を記念して、後にこの日3月15日が「靴の記念日」として制定されました。以上が、「靴の記念日」誕生秘話ですが、いかがでしたでしょうか。ここには書き切れないほど、日本の靴文化の歴史には多くの物語が存在しています。
画像/皮革産業資料館(The Leather Industry Museum)提供