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ポール・ウェラー【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.14】

2018.10.16 08:44

先日、某ラジオ局を聴いていたら「未来に残していきたい音楽とは!?」という特番を放送していた。リスナーから思い思いの未来に残したい曲がエピソードと共に紹介されていたのだが、「想像もつかなかった曲を残したいという人がいるんだなぁ」とか、「やっぱりそれは残したいよね」などいろいろ思うところがあった。 

音楽好きなら「あるある」だけれども、やっぱり残しておきたい自分にとって大事な曲が必ずあるはず。 


この曲がなければこのブログも書くことはなかった!?


私は下部のプロフィールにも書かせてもらっていますが、ブラックミュージックが好きでR&Bやソウル、ファンクをずっと聴いています。 ですが、学生の頃はロック少年でした。ギターもやっていたし、ロックばかり聞いていました。 


ただ、ギターを弾き始めた頃はビートルズが教科書。インターネットもなかったし、情報が今に比べて極端に少なかった時代、他に知らなかったというが本音です。知らなかったから、それを信じて一生懸命聞いて、ロックとギターを覚えていました。


そんな時、友人から「ビートルズより面白いのがある」と言われて教えられたのが、ザ・ジャム「イン・ザ・シティ」だった。


The Jam「In The City」


当時、どっから仕入れたのかもわからないようなこの曲のビデオを、友人の家で何度も何度もテープがすり減るくらい食い入るように観たのを覚えている。 細身の黒スーツに黒ネクタイ、モッズファッションよりイカしたスタイリッシュな出で立ちに、ギターを荒々しくカッティングし、狂ったようにステージを暴れるスタイルは、当時の自分に強烈な印象と夢中にさせる要素を多分に持ち合わせていた。 


上記の「イン・ザ・シティ」の映像はレコードになっているバージョンだが、ぜひこの曲はライヴバージョンで聴いていただきたい。さらにビートが早く疾走感溢れる、シンプルながらも張り裂けんばかりのテンション、今聴いても手に汗握る興奮がある。もし機会があれば、2015年に発表された5枚組のライヴ・アルバム『Fire And Skill』を聴いてもらいたい。そこに彼らのすべてが集約されている。


ポール・ウェラーはホントにかっこ良かった。歌っている姿、ギターの弾き方、ステージでの立ち振る舞い、その動き一挙手一投足にしびれた。こんなにかっこ良い奴は他にはいないと思っていました。余談ですが、当時彼が弾いていたリッケンバッカーのギターが欲しくて欲しくて、でも高価過ぎて買えなくて… 結局グレコのリッケンバッカーモデルをバイトして買った思い出があります(苦笑)それでも当時の自分にしてみては高価でしたけどね。。 


その後、ザ・ジャムはすでに解散していたことを雑誌で知ることとなる。 ショックだったが、リアルタイムで観ていた訳ではないのはわかっていたので、あのポール・ウェラーは今何をしているのかを探ってみることにした。 


【スタイル・カウンシルの始動】


昔の雑誌の記事に「ザ・ジャムはもう終わった。2度とやらない。これからは黒人音楽をやっていく」と書いてあったと記憶している。 もう2度とやらないなんて、何でそうなったんだ!?と思ったが、それ以上に「黒人音楽って何?」ということが疑問だった。恥ずかしながら当時黒人音楽を知らなかったのだ。 


モッズブームを巻き起こし、名実ともにイギリスを代表するバンドとなっていたにも関わらず、人気絶頂のタイミングで解散…。 

今思えば、ポール・ウェラーの美学だったと言えるだろう。惰性で続けていくことを断固として拒み、新たな道に迷うことなく進んだ。ただ当時の自分には理解できなかったことでもあった。 


ザ・ジャムの解散を知ったその日、早速レコード屋に行って、スタイル・カウンシルのアルバムを探してみた。


The Style Council「My Ever Changing Moods」


「なんだ、この曲!?」 

ザ・ジャムと曲が全然違うし、ポール・ウェラーがファッション雑誌から出てきたようなモダンなスタイルになっている。ショックもあったが、違和感の方が強かった。こんなことを演るためにザ・ジャムを解散させたのか…。 

あまりの違いに戸惑っていたが、あのポール・ウェラーがインタビューで「今はこの音楽なんだ!」という記事を見て、自分の憧れだったポール・ウェラーを追及してみようと思った。 


The Style Council「The Lodgers」


聴けば聴くほど、スタイル・カウンシルの虜になっていった。 

ブラックミュージックに影響を受けたこの「ロジャース」は当時としては、シティポップも取り入れた最先端のサウンドだった。今聴いても心地よい。ザ・ジャムで魅せていた荒々しさはすっかり影を潜め、完全に大人の音楽を演っている。 

自分もあれだけ夢中になったロックへの思いは醒めていき、ポール・ウェラーが影響を受けたブラックミュージックへと傾倒するきっかけとなった。 


それからブラックミュージックを探る日が続く。 

そんな時、スタイル・カウンシルが解散して、ポール・ウェラーがソロになったことを知る。ソロデビュー作『Into Tomorrow』がリリースされた1991年。 


『ポール・ウェラー・ムーヴメント』という実態がよく掴めない名義でのリリースは、今後ソロでいくかバンドでいくかハッキリわからないような印象もあった。実際、リリース当時イギリスではほとんど評判にならなかったようだ。サウンドを聴いてみると、ザ・ジャムでもスタイル・カウンシルでもない、新たなジャンルに挑んでいるポール・ウェラーがいた。



そんなポール・ウェラーが、先月ニューアルバム「トゥルー・ミーニングス」をリリースした。全体を通してアコースティックで彼の優しい歌声が響く牧歌的な曲が並ぶ。彼の新たな世界観をじっくりと聴かせてくれるアルバムを完成させたのだ。


「トゥルー・ミーニングス」

発売中 ¥2,457+税/WPCR-18080



特筆すべきは、タイトル「ボウイ」と名付けられた亡きデヴィッド・ボウイに捧げられたであろう曲。デヴィッド・ボウイとポール・ウェラーは昔、敵対していたと言われているが次第に良好な関係になっていったと伝えられている。そんな貴重な友人の死。大人になってから分かり合えた友に、愛溢れるメッセージを天国に届けるかのような曲になっている。ぜひ英歌詞をかみしめて聴いてもらいたい。


今回のアルバムを聴いて、ポール・ウェラーは非常に安定した時期を迎えているのではないかと感じた。いろいろな音楽・ジャンル・ムーブメントを経てたどり着いたアルバム。 本人はインタビューで「この辺りでちょっと思慮深い方向性を打ち出してみたのさ。もちろんこのスタイルをこれからずっとやってくわけじゃないけどね」と語っている。まだ彼の挑戦は続くのだ。 

御年60歳のポール・ウェラー。ジャケ写のビジュアルを見ると歳を重ねて渋さが出てきたようだ。いくつになってもポール・ウェラーは、自分にとって永遠のカリスマであることを再認識させてくれた。 


<ポール・ウェラー アーティスト・ページ>



DJ GON 

 趣味でゆるーくDJをやっております。ジャンルはR&B、ソウル、ファンク、ディスコ、ハウス、あとちょっとEDMも。 

 最近はDJもデジタル化の波が押し寄せていますが、たまにはレコードのグルーヴもいいものですよ。