妊娠は病気ではない。
20世紀は、感染症で亡くなる方が多い時代でした。
そのため、医療の目的は、命を救うことだとされてきました。
今でも、命を救うために存在していますが、立ち位置が少し変わってきました。
今では、セカンドオピニオンやインフォームドコンセントといった患者が安心して、望む治療や検査を受ける選択が重要だとされています。
しかしながら、新型出生前診断において妊婦がこの検査を希望して受けたとしても、社会的な批判が巻き起こっています。
ここでは、社会という側面ではなく、医療の目的という側面から見ていくと、
そもそも、妊娠は病気ではないということが、前提にあります。
ですから、医療の立ち位置の変化に対応するということは少しあり得ないのです。
妊娠に関する費用は、国民保険や社会保険では保証されていませんから、その代わりに、手当て金として補助金という形で支給されます。
その妊娠中に何らかの病気が見つかった場合は、保険で保証されるわけですが、
ここで胎児に何らかの病気が見つかる、例えば新型出生前診断をして染色体異常が見つかる。
この場合は、まだ胎児の遺伝子治療は研究段階ですので、医療の目的である命を救う、病を治すということは難しいのが現状です。
しかし、妊娠という現象は、病気ではない。
妊婦さんに病気が見つかれば治療ができる。
胎児の場合は、産まれてこないと治療ができない。
お腹の中で治療をすることができないこと。
これが、選択的中絶の原因かと思います。
お腹の中で治療をすることができれば、中絶をしなくても良いわけで、むしろ夫婦は喜んで子どもが生まれるのを待てます。
そこで、この新型出生前診断を取り巻く医療という立ち位置は、
命を救う、病を治すという方向に向かいつつも、それがまだ実現できていないために、今の時代の患者が希望する医療を受ける選択を重視しなければならない。
それに加えて、陽性だった場合、産むか産まないかの選択もしなければならない。
という、医療の中でも少しいびつな状態のように見えます。
これが、社会的問題と一色単にされ、様々な議論が交わされているのです。
それで、何をお伝えしたかったかというと、
医療の目的は、命を救うことであっても、中絶を無くすことではないということです。
中絶をしても良いのではなく、中絶をしなくても健康なベビーが生まれて来れる遺伝子治療をもっと発展させなければならないということです。
そうです。新型出生前診断で陽性だと分かっても、遺伝子治療が出来れば、安心してお産に持って行けることが出来るのです。
ただ、現在の医療では、それが出来ない。
そのために、夫婦は苦しんでいるわけです。
だからこそ、今の時代にあった医療の立ち位置である
「希望する医療を自由に選択して、そして安心したい。」という気持ちを尊重しなければならないと思うのです。
世の中には、望まない妊娠、望まない中絶があります。
望まないことが起こることは、とても辛いことですし、できれば避けたいことです。
妊婦さんが望んで新型出生前診断を受けることに対しての批判的な考えは、あってはならないのです。
それこそ、医療の目的から外れてしまうのです。
新型出生前診断を受けるかどうか迷っている妊婦さん、そしてご主人や家族。
「受けたい」と少しでも思うのであれば、自由に受けることができます。
ただ、受ける場合は予約が良いタイミングで取れるかどうか分かりません。
東京のクリニックでは、全国各地のクリニックと提携して新型出生前診断を比較的近場で自由に受けられるようにしている施設もあります。
しっかりと調べて、夫婦が望む医療を自由に受けられる環境を是非とも作っていただきたいものです。