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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

University College London(UCL)留学記:疫学の授業②

2018.10.18 21:25

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


前回から、先日受けた疫学の授業に関して書いています。 

前回の記事 


講義の中で、 

ベーコンをたくさん食べるグループは、食べないグループと比較して消化器のがんに掛かるリスクが70%高まる 


のような内容の話が出たことを書きました。 


それに関して、講師の先生が話された内容を書きます。 


このデータの解釈に関して下記の様な注意点を述べていました 

①必ず相対リスクだけ直接リスクの比較も行いなさい 


そもそもこのガンは、非常に掛かる人の少ない病気とのことでした。70%の増加と言われるとインパクトがあるけど、『3.1人/10000人が5.5人/10000人に増える』と言われると、数字の見え方が変わるんじゃないか?? 


②疫学研究は、関連する項目の全ての調整ができるわけではない  


例えば、ベーコンをたくさん食べる人は、太っているかもしれない。きっと煙草も好きだ(この辺は文化の差なのかもしれないけど、ジャンクフードを好む人は、たばこも好きみたいな偏見(?)でしょうか(*_*;))  だから、実はベーコンが影響しているんじゃなくて、これらの関連する他の項目ががんに悪影響を与えるのかもしれないよ。と  

明らかに関連する項目は統計的な手法を使えば調整ができる。でも未知だけど影響する項目は調整のしようがない。『だって、未知だからね。』とも 


『この研究成果をもって、ベーコンは食べてはいけないというのは飛躍しすぎだし、かといって、ベーコンを積極的に推奨するというわけにもいかないな』

とのことでした。 きっと、疫学的研究(ランダム化された介入研究でない)の結果を解釈する際にはこの様な曖昧さを加味して判断しないといけないということなのだと思いました。 


ただ、そうなると、栄養に関する疫学的研究からまともな結論が引き出せないことになってしまいます( ;∀;)

どの様な結果が出ても、『そうかも知れないし、そうでないかも知れない』では、多額の費用をかけて調査をする意味がないのではないか??と思ってしまいました。 


で、授業後に講師の先生に聞いてみました。 

①面白い講義をありがとう 

②ただ、この講義によってさらに疫学的研究の解釈に混乱してしまった。 

③ベーコンは、結局食べていいのか、悪いのか? 

④患者さんに栄養に関して質問を受けたらどのように答えるのが、現在までのデータからみて合理的なのか?


 先生の答えは以下のような感じ  

疫学的な研究は、曖昧さを伴う。何故かというと、多くのバイアスを含んでいて、そのバイアスを調整するのは簡単じゃないから。統計的な手法を使えば、関連しそうな項目の調整はできるよ。でも、未知の項目に関しては調整ができないでしょ。だから、この様な研究は文脈の中で捉えなければいけない(前後の研究の結果も踏まえて考えないといけないという意味で捉えました)。疫学的な研究の結果を踏まえてアドバイスをすると結局はバランスよく適切な量の栄養を摂取しようという結論に落ち着きます(『退屈かもしれないけど・・・・』と頭を掻いていた)。 



以下は私見というか、この話を聞いて私が考えたことです。  

たとえば、たばこの害などは、実は厳密な介入研究によって明らかにされていません。ここまでたばこの害が明らかになってしまうと、今更『煙草を吸うグループ』と『吸わないグループ』を設定して比較することは倫理的に認められない可能性が高いです。多数の大規模でよくデザインされた観察研究と病気の発症メカニズムなども鑑みて煙草の害は間違いないだろうと。 


ただ、複数の大規模な観察研究の結果がランダム化された介入研究でひっくり返ったことは歴史上いくつもあります。私がプレセッショナルのエッセーで書いた『ホルモン補充療法』などもその例の一つです。


『よくデザイン(ランダム化)された介入研究ほど決定的に因果関係を示すことはできないけど、観察研究の積み重ねで結論を形成していくというアプローチもあり得る』位の理解でいいのかも知れません(^o^)/。 


なので、私の今の心象は前回紹介した本に関しては、とりあえず、疫学研究の結果を拡大解釈してしまった可能性が高いという方に傾いています。


ただ、まだ実際に読んだわけではないので、改めて、まっさらな気持ちで読み込んでみたいと思います。 


追記 

疫学に関して熱心に質問していたので、 

先生「君は医師?」と聞かれました。 

倉形「いえ、理学療法士です。臨床疫学の手法をリハビリに取り入れたいんです。」と言うと 

先生「パーフェクト!!」と喜んで(?)くれました。 


改めて、セラピストが臨床疫学の知識を得て、エビデンスに基づいたリハビリを当たり前に提供できるようになる手伝いをしたいな~と思いました。 


内容はそんなに複雑じゃないんだけど『臨床疫学』って単語がちょっと、とっつきにくいかも知れませんね。。。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 








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