「ギブ・ミー・ア・チャンス」/荻原浩【がんばって何が悪い?!】
「ギブ・ミー・ア・チャンス」は、2015年に発行された、荻原浩さんの短編集。
2012年から2014年に初出された作品、8本収められている。
(文庫は今月出たばかり)
これを書いた頃の荻原さんは、もう10年以上前に専業作家になっていたようだけど、まだまだチャンスが欲しかったのかな・・・と勝手に想像しながら読んだ。
8つの短編の主人公は、元力士の探偵、歌手、漫画家、キャビンアテンダント、ゆるキャラ、タレント、ミステリー作家、お笑い芸人。
・・・になりきれていない人たち。
これから夢を叶えようとしていたり、一度叶えた夢を失って、やり直していたり、チャンスが訪れることを待ちわびている。
8人に共通しているのは、ただチャンスを待っているだけでなく、ものすごく努力しているところ。
頑張り方がもしかしたら間違っているかもしれないけど、あの手この手を考えて動いている。
そして努力した分、自分の才能のなさをよく知っている。
柚木麻子さんの「伊藤くんA to E」の伊藤君とは全然違う!
(伊藤くんは、夢は見るだけで動かないから、自分は才能があると信じている)
私は、『伊藤的にだけはなるまい、少しでも油断すると伊藤になる!』と自分に言い聞かせながら努力を怠ってしまうので「ギブ・ミー・ア・チャンス」の主人公たちの姿勢を見て、やっぱりサボっちゃダメだと思わされた。
読み進めていくと、やっぱり、荻原さん自身も必死で努力して、チャンスを得ようとしながらこの作品を執筆したのでは?と思わずにいられなかった。
ちなみに、この作品が出た翌年の2016年に荻原さんは、60歳で、直木賞を受賞されている。
チャンスゲット!!!
と、おっしゃったでしょうか?!
さてさて、「ギブ・ミー・ア・チャンス」の中には、それぞれの短編にものすごく共感したところがあった。
歌手の編では、自分が歩んできた道を
”長く生きている誰かが、自分の辿ってきた道のりを実際以上に立派に気付き上げた道。”
と表現していたのが印象に残った。
確かに、チャンスを得るために先人と同じような方法でしかアプローチできないと思い込んでいるところってある。
そうした壁に行く手を阻まれてしまったり。
正解がないから、自分なりに道を見つけられたら一番良いのだけど、誰かの前例、探しちゃうよな~。
タレントの編では、世間が鈍感に主人公を傷つけていくことに胸が痛んだ。
それから、みんな夢を叶えるために努力しているのにも関わらず、その動機が、意外と大したことなくて笑えたりも。
何のために夢を叶えたいかを突き詰めていくと、モテたいとか、お金持ちになりたい、昔の同級生に認められたいとかだったりする。
つまり、富と名声が欲しい!ってこと。
ハングリーで何が悪い!?
それからそれから、夢を叶えるために動きだすと、才能のなさを痛感しても諦めたとは言いにく状況になっていくもの。
夢が叶わなかったら、どう落とし前をつけたら良いのだろう。
主人公たちのこのあとの人生も覗いてみたい。
8人は、チャンスを渇望しているのだけど、仮にチャンスをゲットしたとしても、悩むことからは解放されないんだろうな。
夢を叶えたら好きに生きられるって思いがちがけど、どこまで行っても、夢や理想にはたどり着けない気がする。
チャンスを得て、ステージが上がっても、そこにまた苦悩が待っている。
「ギブ・ミー・ア・チャンス」の主人公の周りで、主人公が欲しいチャンスを手にしていった登場人物たちにも安泰感はないな~。
もう一つ、「ギブ・ミー・ア・チャンス」の主人公たちのように夢に向かって努力してる人って、現実から逃げてると思われがち。
現実=堅実に働くって、どこかで思っていたりしないかな。
堅実も大切だけど、別に夢を見ることは、何から逃げているわけでも、サボっているわけでもない。
私は、夢に執着している姿を見られて、カッコ悪いと思われたくないっていう変なプライドのせいで、がむしゃらになれてないな。
学生の頃、この人生、アナウンサーにならずして死ねるか!と思った時の勢いを呼び覚まし、頑張っていこう!
写真は、先日娘と行ったシルバニアファミリーの施設にあったジオラマ。
この町には夢がいっぱいだ~!
チャンスは巡ってくる!
夢はかなう!
・・・と信じて努力だ。