尾上松也ら7名が今回限りで卒業! 若手歌舞伎俳優の登竜門『新春浅草歌舞伎』取材会
さる12月18日、2024年1月2日より浅草公会堂にて上演される「新春浅草歌舞伎」の取材会が都内のホテルで行われました。
毎年正月に浅草公会堂で行われている「新春浅草歌舞伎」は、「若手歌舞伎俳優の登竜門」としても知られ、若手が大役に挑み、互いに切磋琢磨しながら経験を重ねていく成長、飛躍の場でもあります。
この日の取材会にも、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉といった、歌舞伎界きっての若手花形俳優たちが顔を揃えました。
今年はコロナで中止になっていた「お年玉」といわれる年始挨拶復活、役者も部をまたいで複数の公演に出演します。
またこの日には併せて、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人の7名が今回の公演で一区切りという浅草歌舞伎からの”卒業”が発表されました。
最初にあいさつに立ったリーダー格の尾上松也は、これまでを振り返り、
「浅草歌舞伎には出演させていただくようになってこれで10年目という節目になりました。2024年の浅草歌舞伎は(コロナ禍での制限を経て)ようやく元の通りに公演を打てるというのが非常に嬉しく思っております。
私も来年は30代最後の年ということで、自分ではまだ若手という気持ちはあるんですけれども、自分自身が若いころこの『浅草歌舞伎』という公演に憧れて出させていただくことを夢見ながら修行をしていた時期もありましたから、そういう意味ではこれだけ浅草でいろいろな経験をさせていただいたので、その恩返しも含めて、そろそろ後輩の皆さんにこの浅草を託したいというような思いもあって今回を最後にしようという決断に至ったわけです。
初めて自分が中心となって公演を任せてもらえるという風になった時のことを思い出しますと、私にとってはいろいろなことが瞬時に大きく変わり出した転換期で、浅草歌舞伎も自分が中心となって回していただけるという嬉しさもありましたが、同時に不安と恐怖といったいろいろな思いが混ざっていたような思い出があります。その中で、自分がどうやって引っ張っていくか、公演を盛り上げていけるかと言うようなことを考えているときに、ここにいる後輩の皆さんが、積極的に連絡をくださって、『一緒に盛り上げていきましょう。やれることはなんでもやります』と言ってくれて、すごく嬉しかったことをとてもよく覚えています。まだまだ不慣れな部分もありましたけれど、この浅草はワンチームとしてみんなでよくしていこうという気持ちがその時に固まったという感じがしております」
と語りました。
また、思い出深い公演を聞かれた坂東巳之助は、
「お芝居の演目に関しては、一つひとつが自分の中に大切な財産として残っていますので、どれというように選ぶことはできませんが、印象に残っているのは我々がやらせていただくことになった最初の年のときに、ものすごい宣伝活動をしたなということはすごく思い出深いですね。あんな短期間に大量のバラエティ番組に出たのはあの時だけだったんじゃないかなと思うので、思い出を聞かれて真っ先に出てくるのは、みんなで不安と闘いながらも精一杯この「浅草歌舞伎」を盛り上げようという気持ちでバラエティ番組に出まくった最初の年ですかね」
それぞれが本公演への意気込みやこれまでの思い出を語った取材会の最後には、先輩を見送る立場の中村橋之助と、送られる立場の尾上松也がそれぞれコメントをしました。
中村橋之助「やはり松也お兄さん、巳之助お兄さんをはじめ、この世代の中に僕も莟玉くんも出させていただいて、お兄さんたちもその1つ前の世代に出てらして、そこから橋渡しをしてくださってこの世代を盛り上げてくださった。僕も同じようにお兄さん方の世代に出させていただいて、来年以降橋渡しをしてお兄さん方のいいところをとって、莟玉くんと一緒に先頭に立ち、お兄さんたちの思いもたくさん受け取りつつ、僕たちの代の思いと熱さを出せるように。悔いなく託していただけるように頑張りたいです」
尾上松也「今、橋之助くんが言っていたように、僕も僕らの前の世代に『浅草歌舞伎』を盛り上げてくださった先輩方の思いを感じながら10年前始めさせていただいて。それがあるからこそ何とかしなきゃということでたくさん宣伝もしましたし、初めて幕が開いたときには歌昇くんが『涙が出るほど嬉しかった』と言っていたのを覚えています。そういう思いがあるからこそ繋がってきた浅草歌舞伎だと思います。僕たちも初年度に誓い合ったのが、とにかく僕たちの世代でこの浅草歌舞伎を途絶えさせることのないようにと誓い合ったのを覚えています。何とか僕たちも10年間続けてくることができましたので、後輩の皆さんにもここまで続いてきた先輩方の思いと、地元の皆さんの情熱を忘れずに、さらに盛り上げていっていただいて、浅草歌舞伎を発展させていっていただけたらなと思っています」
<新春浅草歌舞伎>
2024年1月2日~26日
浅草公会堂
第1部 午前11時~
第2部 午後3時~
【休演】8日(月・祝)、19日(金)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/833
第1部
お年玉〈年始ご挨拶〉
一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)十種香
八重垣姫:中村米吉
武田勝頼:中村橋之助
腰元濡衣:坂東新悟
白須賀六郎:中村種之助
原小文治:坂東巳之助
長尾謙信:中村歌昇
二、三世瀬川如皐 作 与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)源氏店
切られ与三郎:中村隼人
妾お富:中村米吉
番頭藤八:市村橘太郎
蝙蝠の安五郎:尾上松也
和泉屋多左衛門:中村歌六
三、神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)どんつく
荷持どんつく:坂東巳之助
親方鶴太夫:中村歌昇
太鼓打:中村種之助
大工:中村隼人
子守:中村莟玉
若旦那:中村橋之助
芸者:中村米吉
白酒売:坂東新悟
田舎侍:尾上松也
第2部
お年玉〈年始ご挨拶〉
一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋(くまがいじんや)
熊谷直実:中村歌昇
相模:坂東新悟
藤の方:中村莟玉
梶原平次景高:中村吉之丞
堤軍次:中村橋之助
源義経:坂東巳之助
白毫弥陀六:中村歌六
二、流星(りゅうせい)
流星:中村種之助
三、河竹黙阿弥 作
新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)
魚屋宗五郎:尾上松也
女房おはま:坂東新悟
小奴三吉:中村種之助
磯部主計之助:中村隼人
菊茶屋娘おしげ:中村莟玉
菊茶屋女房おみつ:中村歌女之丞
父太兵衛:市村橘太郎
鳶吉五郎:中村橋之助
召使おなぎ:中村米吉
岩上典蔵:坂東巳之助
浦戸十左衛門:中村歌昇