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城田実さんコラム 第36回 議員は有権者を意識しないのか? (Vo.77 2018年9月24日号メルマガより転載 )

2018.10.22 19:50


 東ジャワ州の中心都市の一つであるマランの市議会で3日、議員50人のうち45人が汚職で勾留中のため本会議が流会になる事件があった。来年任期満了となる市長の責任を総括する演説や来年予算案などの重要議案が審議される予定だった。地方議会議員の大量逮捕は毎年のように発生しているが、今回はその中でも衝撃的だった。この難局を乗り切るために、本会議成立に必要な定足数を4人に変更する「迷案」まで真面目に議論されたらしい。


  この椿事(ちんじ)が大きな関心を集めたのは、来年の議会選挙に向けて総選挙委員会が、元汚職服役者の立候補を認めないという規則を制定し、国会や内務省から選挙監視委員会まで関係機関がこぞって反対する中で、甲論乙駁(こうろんおつばく)の激しい論戦の最中であったからだ。


   選挙法が明文で禁じていない公民権を制限するこの規則は常識的には無理筋のようにも思えるが、折からのマラン議会事件もあり、世論は当然のことながら総選挙委の「勇気ある行動」を支持する声が高まった。データをいちいち挙げるのもうっとおしいくらいに汚職は国の土台を蝕んでいるのだから当然の反応であろう。


  最終的には最高裁判所が、「上位規範である選挙法に反する総選挙委規則は無効」と判決を下してこの問題は法的には決着した。3政党が最高裁判決にもかかわらず被選挙人名簿の元汚職服役者を別の候補と交代させると発表したのが救いだが、それとても選挙キャンペーン開始直前で党のイメージを優先させた党利に基づく判断に過ぎなかろうとかんぐりたくなる。汚職絡みの政治スキャンダルは過去に数え切れないほど存在するが、それらに共通する基本問題は、政党がどこを向いているかというテーマであった。残念ながら国民には目が向いていないというのが今までの経験の貴重な教えになってしまっている。


  なぜそうなのだろうか。国会議員と議員選挙区との関係が希薄なことがその一つの理由のような気が前々からしている。選挙区の有権者は選出議員をあまり知らないし、議員も選挙区の有権者の目を気にしない。ある調査によると、今回の国会議員候補7991人のうち、49%の3893人がジャカルタ首都圏(所謂ジャボデタベック)の居住者であった。首都圏は国会議員数575人のわずか65議席を占めているに過ぎない。国会休会中に選挙区へ帰るにも出張扱いを要求するくらいだから、議員と選挙区の関係は希薄だ。


  最近は重要政治問題での議員の発言や行動を報道する際に、議員名に出身選挙区を付記する記事をよく見かけるようになった。議員が有権者の目を怖れる政治文化はこんなところから生まれるのかも知れない。(了)