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美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

美しき夢の名残り 京薩摩「花見図花瓶」(錦光山宗兵衛 作 明治時代後期)

2018.10.23 13:26

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.8.4>主な解説より引用)

京薩摩とは、釉薬を施して焼き上げた白素地に、「絵付け」としての骨描き、彩色、焼成と色の定着、金彩を施し再び焼成を経て完成する、細密な陶器である。

 多彩な色絵と光り輝く金彩が美しい、細やかで華やかな絵付けの陶器であり、本家薩摩(鹿児島)で作られた本薩摩に対して、京都で作られた薩摩焼なので「京薩摩」と呼ばれる。茶屋で居合わせた庶民の桜花見風景の一シーンが、図柄の主なテーマである。

 世界最先端のデザインと技術が込められた、和洋折衷の究極をめざした妖しく輝く、美しい陶器。パリ万国博覧会、明治のウィーン万国博覧会などで、西洋の人々の目に留まった「京薩摩」は、KYOSATSUMAとよばれ大人気となっていった。

 「粟田焼」として焼き物の一大産地となった、京都・東山区粟田口にあった「錦光山工房」は、名門の窯元として大発展したが、1920年代の昭和恐慌、金融恐慌といった時代の波にさらわれ、徐々に廃業に追い込まれていった。

 作者の七代目・錦光山宗兵衛(1868-1927)は、 明治大正期の企業家であり、京都の製陶業振興に貢献した。父が輸出事業に積極的であったことから、若くして家業を継ぎ,「錦光山」のブランドで、世界に輸出し、外国へも視察に出かけた。

(番組を視聴しての私の感想綴り)

 職人たちの匠の技と技術の結晶。超絶技巧シリーズの冒頭を飾るにふさわしい花瓶(作品)である。

和洋折衷という「新たなデザインの形」に挑戦していった志も、決して色褪せていない。むしろ、われわれ現代に生きる日本人に欠けている視点ではないかと。

 七代目・錦光山宗兵衛氏は、時代を先取りしようと、ヨーロッパやアメリカなどの海外へ勇躍勇んで、マーケット・リサーチに出かけていったと知り感動した。

 ジャポニズムから生まれたアール・ヌーボーを逆輸入して生まれたのが、本作品であるとも。日本の美を徹底的に研究し尽くして造られた「京薩摩」の作品群は、海外から賞賛・絶賛され、世界中の美術館に点在している。

 美しき細胞のような集積で出来上がった本作品は、あたかも「永遠の美」をも希求するとともに、その情熱と美への執念の結晶とも言えるのではないか。

 「光」、「影」、「フォーム」、「時間の経過」、「Music」「3D」、「AI人工知能」などといった、新たなエレメントを、ミックスチャーしたもの。その先の、「ネオジャポニズム作品」。これは、陶器に限定されないが、絵画のような平面ではなく、3Dを取り入れた立体フォルムを創りだせないだろうか・・・

 それこそは、「新たな和洋折衷」の先に存在するのではないかと夢想した。

写真: 「花見図花瓶」(錦光山宗兵衛 作 明治時代後期)

テレビ東京放映番組<2018.8.4>より転載。同視聴者センターより許諾済。