付加価値ってなんだ。
最近展示会シーズンだからか仕入先の工場さんがかなり来社してくれる。
色々それぞれに開発されていて、新しいサンプルをご提案いただいて日々楽しく技術の結晶を見させていただいている。
その中でちょっと飛び抜けてヤバかった事例を紹介する。(あまり良い意味ではない)
染色加工業というのは非常に他社と差別化しにくい分野だったりする。
生地加工であれば結構化学反応出せるので独自の加工ってあったりするんだけど、糸染加工ってほとんど差が出ない。
チーズ染色の場合、下巻きといって原糸を染め用のPPと呼ばれるプラスチック性の菅に巻き直す。
↓PP
そしてこんな感じで↓棒にいっぱいそのPPに巻かれた糸を刺して、、、
染め釜にドボン↓
そしてさっき刺した棒と、染め釜の両方から染料を流しこむことで糸を巻きつけた中まで色が満遍なく染めていく。
染め終わったら普通の糸菅に糸を巻き直して出荷になる。
今回紹介されたのはその染色後の処理でパラフィン樹脂を投入することで糸が柔らかくなって生地の風合いが良くなるという技術だった。のだが。
---以下寸劇は上記の事前説明がない状態で始まる。---
糸染屋さん「山本くん、これどない思う?」
---パッとボーダーの生地見本を渡される山本---
山本「どう思う?というと?」
糸染屋さん「いや、どない?」
山本「いや、何も感じないです」
糸染屋さん「そう?やらかいと思えへん?」
山本「柔らかいですかね?あんまり普通のものと変わらないと思いますけど」
糸染屋さん「ほんま?!これ実はな、、、(ここで先述の説明がある)やから生地やらかなんねん!ええやろ!付加価値あると思えへん?」
山本「いや全然思わないですね、なぜならカクカクシカジカ」
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もうお判りいただけるとは思うが、僕の素直な感想で圧倒的に風合いに差がないものを加工工程で一手間加えただけなのに「付加価値」とおっしゃるのは一般エンドユーザーにはほとんど認めてもらえない。
ただ加えただけで差が認められないのに単価だけ高額になるものをどうして受け入れられようか。
この糸染屋さんの場合、少なくとも対比になる素材を一緒に見せるべきだったと思う。
そして一抹の差を感じることができたなら、そういう価値を価値として見てくれる人もいるかもしれない。
ただ圧倒的ではなかったので敢えてその加工が必要だったか?は僕の中では疑問符がなくならない。
しかしながらこういった「付加価値」の押し売りは工業に蔓延している。
付加価値ってなんだ。
ウィキってみた。
たぶん、2の意味で使われていることが多い気がする。
サービスに付け加えられた独自の価値。
そういう意味では価値付けをするのはサーブ側の勝手ということになるのか。
ただし、それを受ける側がその価値に見合っているかを判断するかどうかが真意だと僕は考える。
でなければ需給のバランスが取れないのでその付加価値は無価値ということになるのではないか。
その視点が製造業に根付くまでの道のりは長そうだ。