好き嫌いをさせない、予防する方法
子どもの好き嫌い、偏食に悩んでいませんか?
好き嫌いがあるのは当たり前ですが、なんとか栄養のバランスよく食事をさせたいのが親心。
ましてや好き嫌いの域を超えて偏食になってくると余計に心配です。
この記事では、触覚過敏・味覚過敏・嗅覚過敏で食べられない場合を除く、後天的に学習された好き嫌いや偏食の対応方法を書きたいと思います。
感覚過敏の話は、また後日別の記事にしようと思っています。
ちなみに、「子どもが好む調理法」とか、「美味しい料理方法」とか、そういう内容では一切ありません。
ご紹介する方法は極めてシンプル「え?それだけ?」な方法です。
しかし、後天的な好き嫌い(食べ物を拒否できると学習した結果、食べたくないものを選択的に拒否する行動、という意味で使っています)を減らし、それ以降の好き嫌いや偏食を予防する効果もある方法です。
ちなみに、この記事で使用する「嫌いな物」は、「嫌いな物+好きでも嫌いでもないまあまあのもの」も含む、と理解していただけるといいと思います。
もったいぶるようですが、そもそも好き嫌いが発生する構図はこんな感じ。
そもそもの条件として、「お腹がいっぱい」では、食事が進まず、好きなものしか食べないでご飯を残すのは当たり前ですね。
間食の量には要注意。また、沢山食べさせたいからと言って、大人が食べさせたい量のご飯を出すのも止めましょう。見るだけで食べる意欲がなくなってしまいます。
次に、皿の上に「嫌いなものがある」という状況で、(自分の皿の上でも食卓やキッチンのどこかでも)「好物が見えている」という状況があったとします。
そこで子どもはどんな行動をとるでしょうか。とりあえず、好きなものだけ食べますね。そして、
「食べない!」と言ってみたり、「あれ食べたい!」と駄々をこねて見たり、ふざけてみたり、寝たふりをしてみたり、はては皿をひっくり返してみたり…
こんなことをしていると、たいていの親は「嫌いな物も食べなさい!」と怒ってみたり、「お願いだからこれだけ食べて」と泣き落としにかかってみたり、「そんならもう食べんでよろしい!」とかんしゃくを起こしてみたりします。
結果として、子どもは”狙い通り”嫌いな物を食べずに済みます。
もっと悪いのは、子どもがお腹をすかせては心配と、子どもが望むものだけをあげる、という対応です。
ここで言いたいのは、子どもの好き嫌いや偏食は、ある程度生まれ持った「好み」の問題はあるにせよ、学習の結果、嫌いな物を拒否する手段を身に着けた状態、とも言えるということです。
好きな物だけを食べて満腹になった状態で、それ以上の食欲、ましてや好きでないものを食べようとする意欲が出るはずがありません(条件が悪い)。
また、何かしらの学習によって「こうすれば大人は僕の好きなものを出してくれる」や「こうすれば嫌いな物を食べずに済む」という知恵を身に着けている場合もあります(行動に対する結果が好き嫌いを増悪させている)。
長くなるので詳述しませんが、これはABA(応用行動分析)でいう所のABC分析です。A(ある条件)がある時、B(ある行動)が起こり、C(ある結果が生じる)。このC(結果)があることで、直前のB(行動)が学習され、維持されるというものです。B(行動)が出やすくなる条件がAです。
分かりやすく言うと、目の前に好きなものがないとき(条件)、「食べない」と駄々をこねれば(行動)、親が根負けして食事を下げてくれる(結果)から、次の機会にも同じように「食べない」と駄々をこね、嫌いな物は食べず、好きな物だけを食べる、という好き嫌いや偏食が形成されていくのです。
じゃあどうするの?
簡単です。
「クエスト方式」「レベルアップ方式」「ミッション方式」どういう名前でも構いませんが、
(パターンA)
1.まず空腹状態を作っておく(最重要)
2.子どもの嫌いorあまり好まないものを先にごく少量出す
3.それが食べ終えれたら、好物を出す
こんだけです。
誤解がないように言っておくと、2の時、子どもの目の前にはほかに食事はありません。イメージとしたら、皿に一粒だけグリーンピースが乗っている感じです。子どもは当然嫌がるでしょうが、にっこりゆったり「これ1個食べたら、大好きなコロッケよ」と言えばOKです。子どもの交渉には一切応じません。食べれたら「偉い!お母さん嬉しい!」と言って、好きなものを出してあげましょう。
これをもう一度図にすると
少量の嫌いな物を食べると、お母さんから褒められ、好物も出てくる。ゲームになぞらえると、クエストをクリアすると、報酬がもらえる、そんな感じですね。
好き嫌いや偏食の強い子の場合、本当に嫌いな物を1粒だけ食べたら、あとは好きな物のみの食事をとる、という方法もいいかもしれません。
そこまででもないという場合、実際には
(パターンB)
1.空腹状態を作る
2.子どもが絶対食べられる量の(大事)嫌いな物も好物も含めた食事を出す
3.子どもがすべて食べ終えれたら、好物のお代わりを出す
でも構わないと思います。要は、好きな物だけを食べて嫌いな物を食べない、という誤学習をさせないことが肝心です。
我が家の場合は…
(パターンC)
1.空腹状態を作る
2.子どもが絶対食べられる量の好きでも嫌いでもないものをまず最初にだす(好物は最初から皿に盛って出さずに、取っておく)
3.子どもが皿を空にしたら、好物を出す
という方法です。
「そのご飯と味噌汁全部食べたら、コロッケ出すね」という感じです。
なんにせよ、ミッションをクリアして、初めて好物にありつけるわけですね。
注意!!!
ここまで読んでくださった読者様、お気づきでしたでしょうか。
「絶対食べられる量の」に下線が引いてあることに。
特にパターンBやCの場合に、「子どもが一度お皿を完全に空にする」ことが重要です。
すべて食べたら、レベルアップして次のステージへ進めるわけです。
ここが好き嫌いを助長させない肝心なところです。
親心とは時に分かっていても失敗をしてしまう厄介なものです。
ついつい食べてほしくて、沢山だしちゃうんですよね。
「このくらい食べれるだろう」は「このくらいは食べてほしい」の裏返しです。
その結果量が多くてお腹がいっぱいになり、嫌いな物を食べようとする意欲が減少しては、いくら励ましても怒っても意味がなくなります。
腹6分目くらいで2番を終え、ご褒美の3番へ進むくらいのイメージでいてください。
そのくらい、「確実に食べきれる量」を見極めて、食事を出してください。
・よくある質問
「でもそれだと、栄養が偏りませんか?!」
はい。偏るかもしれません。が、我々のご先祖は食料が十分にない戦時中においても、懸命に生き延びてこられました。この飽食の時代、栄養失調で死ぬことはまずありません。
それと、ご紹介した方法は最初のステップです。順調にいけば、嫌いな物もある程度我慢して食べるようになりますから、将来的に考えれば栄養バランスはとれます。また、栄養バランスは1日で完結しようとせず、1週間や1ヶ月でバランスよく取れればいい、くらいの気持ちで構わないと思います。
「嫌いな物を出したら、それを食べずにとうとう食事全てを食べませんでした」
構いません。お子さんは空腹でさぞご立腹でしょうが、次の食事の機会まで親も子も耐えましょう。途中で間食をしては元も子もありませんよ?次の食事の際にはそれはもう空腹で、嫌いな物をぱっと片づけ、次に進むと思います。「作戦勝ち」とにんまりしてください。
ちなみに、食事が抜きになったにも関わらず、気にもせず遊びだす子もいます。その場合、普段与えている食事量がその子にとって多すぎたのかもしれませんね。
「子どもの体重が減ってしまうのではないかと心配で、ついつい好物や間食ばかりあげてしまいます」
小さくお生まれになったお子さん、何か病気を抱えているお子さんをお育ての場合、特にそうなりがちです。心配はごもっともで、健全な身体を育成することは親の重要な責務であることも承知しています。
しかし、この記事で扱っている内容は「後天的な好き嫌いをさせない」という趣旨のものです。親が食事量に敏感になっていることは、子どもは十分察知しています。その上で「食べない」という行動をとり、ある意味親をコントロールしているわけです。嫌いな物を無理に食べる必要はないのですが、こういった”自分の要求は通せるものだ”という学習が行き過ぎてしまうと、後々の子育てやお子様の将来の対人関係そのものに悪影響を及ぼしかねません。今一度何が大切なのかを見つめなおし、時には強い心を持つことも大事です。
・まとめ
(好き嫌いをさせない方法)
1.空腹状態を作る
2.嫌いな物を先に少量出して、完食させる
3.好物を出す
(注意点)
・2番で出す食事量は「必ず食べきれる量」
・2番の途中子どもが駄々をこねたり怒ったりしても、動じず根負けして好きな物を出さない
・最後に
いかがでしたでしょうか。実にシンプルな方法ですが、子どもの嫌々に耐えるには、親の精神力が要ります。
要はこの方法は「食事のあげ方」に尽きるのです。
この方法でやっていくと、本当に嫌いな物以外は食べるようになります。
では本当に嫌いな物はどうしたらいいのか・・・?
結論、食べなくていいんじゃないかと思います。
「ここまで言っておいて、それ?!」と思われるかもしれませんが…
上記の方法はいわば「そんなに嫌いじゃないけど、今はあっちが食べたーい」という子どもの気まぐれやわがままを通させないための、幼少期のしつけのための方法であり、「好き嫌いを必ず撲滅させねばならぬ」というわけではないと思うのです。
偏食がとてもきつく、「白いもの以外は食べない」というような子ども時代を過ごされた方でも、大人になってしっかり成長し、健康に過ごされている事例に会うのは珍しいことではありません。
ご紹介した方法はお子さんが「嫌なことでも少し頑張ればいいことがある」ことを学習するための一つの方法です。
しかし、本当に無理な物は無理ということもあるので、強要しすぎるのはいけません。
嫌いな物を出すとき、ごく少ない量で挑戦してみてくださいね。