【コラム】第3節マッチレポート
8トライで2勝目挙げる。
チームは成長痛のただなか
両チームあわせて14トライ。12月23日、パロマ瑞穂ラグビー場で開催されたリーグワン第3節・対三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)戦はトヨタが8、相模原DBが6トライをあげる乱打戦となり、54-40で今季2勝目を挙げた。
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試合後の会見で、ベン・へリングHCと姫野和樹キャプテンが口を揃えた。
「簡単に勝ちきれる相手ではなかった。結果には満足している」
相模原DBは昨季の2戦目で25-27とつまずいた相手。まずは白星を喜んだ。
先にトライを奪ったのは相模原DBだった。開始直後、グラウンドの幅いっぱい使って、強いランナーを次々と走り込ませる。ファーストタックラーで止めきれず、元ニュージーランド代表NO8ジャクソン・ヘモポにトライを許した。最後にボールを繋いだのは、今季トヨタから移籍したFL吉田杏だった。
トヨタも6分、相手陣ラインアウトモールからHO彦坂圭克が「お約束」のトライを挙げ同点に。20分にはFBディック・ウィルソンのトライで逆転する。
25分過ぎからは一気に攻撃のテンポを上げ、10分間に3連続トライ。33-14とリードを開いた。この10分の集中力が勝敗を分けたが、グレン・ディレーニーHCの下、統率のとれた相模原DBは集中を切らすことはなかった。トヨタもファーストタックルで仕留めきれずゲインを許し、試合を支配できない。
会見でへリングHCは「これまでタックル成功率は85%だったが、1対1のタックルは改善が必要。帰ってレビューしたい」と首を傾げた。
後半もトライの取り合いに。逃げ切れる点差ではあったが、 終盤10分間は自陣ゴール前にくぎ付け。2トライを献上し、54-40でほろ苦いノーサイドとなった。
姫野キャプテンは「問題は個人のタックル。どんなに素晴らしいシステムがあっても、そこが機能しなければダメ」とタックルの精度を課題に挙げた。
相模原DBの岩村昻太キャプテンは「前半、マインドセットでルーズになった時間帯があった」と、トヨタにトライを畳みかけられた10分間を振り返った。「自らのミスもあった」という岩村キャプテンに、ディレーニーHCは「それは、チームが強くなっていく過程で味わう“成長痛”のようなもの」と評した。
トヨタも同様に、成長する痛みのただなかにいる。大量点の試合でも最後まで緊張感が保たれたのは、双方その途上にあるからだ。
試合では、トヨタから移籍した吉田杏との対決も注目された。姫野キャプテンは「杏とは帝京大時代から一緒にやってきた仲間。今日はとても楽しみでした。ラインアウトから杏が(自分に)突っ込んでくるサインがあったんですが、ミスで実現しなかったのが残念」と笑顔。吉田も「ヒメさんと直接ぶつかりたかった」と残念がった。相模原DBとは来年4月13日、長崎かきどまり競技場で再戦する。
これで3節を終えて2勝1敗。姫野和樹キャプテンは序盤を終えた感触を「いい方向性でやれている」と語る。「チームとしてやりたいことが明確。だからこそゲームの中で問題点があれば、すぐに改善できる。去年のシーズンは少し迷っていた。そういった意味では、すべてが明確になっている」
今季初先発でトライアシストや、素早い戻りでピンチを防いだFL古川聖人は言う。
「タックル、ジャッカル、サポートプレー…。僕自身のやることは明確。うちにはワールドクラスのヒメさん、トゥポウ、デュトイといるけど、そこは自分が一番じゃないといけない部分だと思っています」
初先発でPOMを獲得したFL小池隆成も同様のコメントを口にする。
「自分に出来ないことはやらない。自分に出来ること――身体を張ることだけにフォーカスしました」
アーロン・スミス、ボーデン・バレットのHB団も時間を経るごとに周りと馴染み、一連のプレーの中で自分たちの強みを出すようアジャストしてきた。選手の役割が明確に分担され、チームとして形が整いつつある。
「去年はディテールが詰め切れていなかった。そこをやるだけでガラリと変わる」と古川。
細部は埋まってきた。あとは習熟度を高めたい。
3節終了時点で、全勝は埼玉ワイルドナイツとブレイブルーパス東京の2チーム。各チームの実力が接近してきたことを物語る。トヨタは1月に、両チームと対戦する(6日=埼玉WK、27日=BL東京)。早くも来月が前半戦の山場となりそうだ。
写真説明
① HO彦坂圭克の今季ファーストトライは「十八番」のラインアウトモールから
② 持ち前の仕事量の多さを発揮したFL古川聖人
③ CTBチャーリー・ローレンスを止める相模原DB・FL吉田杏(右)
④ 今季初先発、後半28分にトライを決めたWTB髙橋汰地