獣医療業界の未来を背負う 八面六臂の活躍をする獣医師 Vol.6
獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ
ゲスト
・上野弘道(東京都獣医師会 会長、獣医師、博士(獣医学))
■愛玩動物看護師の現状と今後、求められることとは 続き
上 野:全国には大規模な動物病院から獣医師1名で経営されている動物病院があるので、働き方もさまざまです。
先ほど私の病院の一例をご紹介しましたが、愛玩動物看護師が国家資格化する以前から動物病院の規模によって動物看護師が担ってきた業務にはかなり差があったと思います。手術の助手など獣医師のサポート業務に専念する場合から、受付など病院まわりの業務も担う場合などさまざまです。
つまり、現場では動物病院のなかでの分業制度が構築できていないのだと思います。国家資格化されたばかりなので、院長先生や病院側が愛玩動物看護師のこれからの働き方について戸惑い、悩むことも当然ですよね。
生田目:おっしゃる通り、各動物病院における動物看護師の業務には大きな差がありますよね。
実際に獣医療現場でも有資格者が業務にあたるようになりましたが、ほかの動物病院では具体的にどのように業務内容が変化したか情報が入ってこないという声もよく耳にしますね。
上 野:獣医師には獣医師会というコミュニティがありますが、愛玩動物看護師には会員同士で協力し合いながら公益活動をするようなコミュニティはないので、十分に情報交換ができていないのが現状だと思います。
獣医師会のコミュニティにも愛玩動物看護師の存在が必要だと感じているので、将来的には東京都獣医師会のなかにも愛玩動物看護師に公益活動をお手伝いしていただけるような制度設計を会員の先生方と考えていきたいと思っています。
情報交換が活発にできれば、お互いに切磋琢磨することでき、愛玩動物看護師としての職域をもっと発展させることができると思います。
生田目:情報交換の場さえを設けることができれば、働き方も大きく変わっていきそうですね。
日本動物医療センターグループでの業務内容は実際にどのように変わったのでしょうか?
上 野:今年から始まったばかりなので、まだ試行錯誤している段階です。
愛玩動物看護師になりたての20人くらいのスタッフが一気に何でもやろうとすると、医療事故が起こる可能性があるので、少しずつ業務の幅を広げるところから始めています。現在は外部から講師をお呼びし、ドライラボを活用しながら採血などの練習を一生懸命行っています。最終的には飼い主さんの前でも皮下点滴などを安心して任せられるようになることを目指しています。
生田目:動物で実践する前に、ドライラボで練習できるのはとても安心ですね。