主客の逆転
Facebook株式会社ボダイ投稿記事
クリスマスツリーも、昼間は影の方が美しい まさに主客の逆転ですね。
https://cdn-aoyamagakuin.com/wp-content/uploads/2019/12/131f.pdf 【羊飼いたちの詩
クリスマス メッセージ】より
アンデルセン作の『影法師』。ある学者の影が、本人を離れて自立をし、勝手気ままに
歩き回った末、ある日突然、再び学者のもとに帰ってくる。次第に主客は逆転します。そし
て、ついに主人の方が影によって闇に葬り去られる。なんとも後味の良くない話です。
ただ、読みようによっては、この世界の「影」が暴走し、コントロールが効かなくなった
社会の薄ら寒さを感じさせもします。
振り返ってみると、世界中で、確かに影たちの暴走がおとぎ話の中だけで終わらないこ
とに気づかされます。多様な在り方、インクルーシヴ、他者との共存・・・尊いとされてきた
理想が、本能に覆いをかけない言葉の前に、なにか綺麗事に聞こえて、異質なものを疎み、忌み嫌う風潮が蔓延する。生きづらさを抱えて生きている人たちに対する攻撃的で剥き出しの暴言が正論となり、ガラスの天井は砕けずに、社会のタガがはずれたかのように、底が抜けるのを目の当たりにさせられる。この世界の影が暴走する昨今。
クリスマスはその世界にこそ訪れるのです。暗闇にたたずんでいる影たち。暴走する直前の、いや、もう暴走することさえあきらめきった者の所へと、誰にも委ねられない重荷を背負って、クリスマスなど自分とは関係がないと思っている一人ひとりのところへと、キリストが身を沈められたのがクリスマスなのですから。
ある意味で、「羊飼い」たちは「影」のような存在でした。高い壁の外の暗がりで、何を
語っても耳を傾けるものはおらず、通じぬ言葉を抱きしめて、交わりを絶たれて、通わぬ
命を引きずっていました。
巷のきらめきが心に突き刺さるのを感じている現代の「羊飼い」たちがいます。寝静まっ
た夜、一人起き出して徹夜の看病や介護をする方たちの、心がきしんで、やり場のない思いが叫び出しそうで、魂食いしばって涙が流れるほどの切なさ。親しい友にも、先生にも、時には肉親にも伝わらない悔しさを抱えて闇に閉ざされ沈黙に押しつぶされそうな影
アルブレヒト・ゲース(1908-2000)はドイツの牧師であり作家です。小説『焔のいけにえ』、『銀のスプーン』などを通して戦争の非人間性を訴えました。探しているようでいて探し求められ、仕えるべきはずなのに仕えられ、世界について学んでいながら結局は自分のことしか考えていない、クリスマスはそのことに私たちに気づかせてくれます。私たちがもう一
度人間らしさを取りもどすときです。飼い葉桶のなかの嬰児がそれを可能にしてくれます。
(大学宗教主任 伊藤 悟)
祈りの声 アルブレヒト・ゲースシリーズ
祈り
大学宗教主任
この『WONDERワンダー』という本を読んだのは、昨年、同名の映画※を見たのがきっ
かけでした。映画には「君は太陽」という副題がついていました。生まれつき顔に障が
いを負って生まれてきたオギーという少年を主人公とした話です。それまで、自分の顔を
周りの人に見せず家庭内で育ってきたオギーが、中学生になり通常の学校に行き始めます。
最初、オギーは、その顔のことでいじめにあいます。そして、自分を唯一助けてくれると
思っていた友人にも裏切られたと感じ、もう学校なんか行かない、と家に閉じこもってし
まいます。しかし、家族の支えや、徐々にオギーのことを理解し、支えてくれる友達も増
えてきて、もう顔を隠さずに学校で過ごしていけるようになっていきます。周りの人々が変
わり、またオギー自身も変わっていきます。とりわけ印象的な場面は、親しくなった友人に
裏切られたとオギーが思い詰め、落ち込んでいた時、それは実は誤解であったことが分
かるところです。そのことを他のクラスメイトは知っていて、オギーに真実を伝え、友情が
奇跡的に復活する場面には心を動かされます。オギーとその仲間たち、そしてそれを見守る家族にワンダー(奇跡)が起こったのでした。私は、これは素晴らしいこと、ワンダフルなことであると思いました。
原作の本は映画と違い、オギー、その姉のヴィア、ランチを一緒に食べるサマー、オギーのクラスメイトの親友ジャック、ヴィアの彼氏のジャスティン、ヴィアの親友であったミランダの視点から個別にオギーについて語られる構成になっています。しかし、圧巻なのは最後に中学校の修了式で、オギーが成績優秀者と並んで「勇気、親切、友情、人格」という人間を人間たらしめる資質に優れているとして「ヘンリィー・フォード・ビーチャー賞」(奴隷制度廃止を主張し、人権について熱心に説いた人物を記念する中学校の賞)を受ける場面です。その時、オギーを心から愛していたママがそっと言います。「ありがとう、オギー」「オギーがママたちの人生にくれた、すべてのものに。うちの家族に生まれてきてくれて、ありがとう。そのままのあなたに、ありがとう」「オギーは本当に奇跡。すばらしい奇跡」。
映画では、最後に「You are a wonder」とママは静かに言う場面が映し出されます。
あなたの大切な人が誕生日を迎えたら、あなたはきっとその人が最も喜ぶものをプレ
ゼントしたいと考えるはずです。同様に、もしもあなたにとってイエス様が大切な方なら
ば、クリスマスはイエス様の誕生日、イエス様が喜ぶプレゼントをすべきです。では、イエ
ス様が一番喜ぶプレゼントって何でしょう。それはたくさんあると思いますが、ここでは二つ
挙げます。
「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キ
リスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。」
( Ⅰ テサロニケ5章16~18節)
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」 (マタイ7章12節)以上を実行することこそ、イエス様の誕生日、クリスマスにふさわしいと思います。
ただ、イエス様があなたにとってそれほど重要な存在でないのなら、少し事情は変わりま
す。その場合は普段通りに過ごして、イエス様の誕生日を心からお祝いしている人たちの気
持ちを害さないようにしてください。それは私『WONDER ワンダー』
R.J.パラシオ著、中村はるの訳、ホルプ社、2015年
※ 映画『ワンダー 君は太陽』 2018年6月公開
わたしたちはあなたを探しません わたしたちにはあなたが見つかりません
あなたが探し わたしたちを見つけてくださるのです 永遠の光よ わたしたちはあなたを愛すること少なく あなたに仕えることがつたないのですが あなたはわたしたちを愛し 仕えてくださる 永遠の僕よ おのれにかまけて わたしたちは 身動きもせず あなたが私たちを求めてくださるばかりです 永遠の言よ 幼子よ 飼い葉おけのあなたをしかと
抱きもかなわぬ わたしたちです ただこのよい知らせは本当なのだと いうだけで精いっぱいでございます
(小塩節・小塩トシ子編『クリスマスの祈りと歌』日本キリスト教団出版局より)