2024年1月4日
2024年になり、薬剤師国家試験まで 残り44日。
2023年研究室はハーゲンダッツとカップ麺パーティでしめくくり(2023年12月27日)、
来年(R6年)2月17,18日の薬剤師国家試験まで 残り44日となりました。
発光基質ルシフェリンとメタンフェタミンは当研究室では非常に良く扱う
物質ですが(残念ながら国家試験にはあまり関係ない)、得られたデータを理解するうえで
個体レベルにおいて、どのように生体に吸収され、目的部位に届き、作用するのか、血中半減期はどれくらいか理解することは重要です(D L体の区別も大事)。
両物質とも構造上および分子量的に脳血液関門(Blood-brain barrier,BBB)を通過しません。しかし両物質ともBBBを通過し生体に効果を発揮します。D-ルシフェリンに関しては、当研究室では個体レベルで全身の細胞群の遺伝子発現リズムを長期間計測するため、D-ルシフェリンは、水溶性で全身に拡散し、かつBBBを通過し脳の全細胞内に入り込み(細胞膜を通過しなければならない)、ルシフェラーゼ酵素と反応することにより遺伝子発現計測が可能となります。腹腔内投与から脳細胞の発光(遺伝子発現計測)が観察されるまでわずか数分です。また非常に水に溶けやすいメタンフェタミン(メタンフェタミン塩酸の状態になっている)は作用部位は脳であり、腹腔内投与されBBBを通過し、脳の全細胞ではなく、特定の細胞(ドーパミン細胞終末およびドーパミン受容体など)に作用し効果を発揮します。抗うつ薬も同様、飲んで吸収され、BBBを通過し、ルシフェリンと違い特定の細胞に作用しなければなりません。全身の細胞に作用するには水溶性である必要がありますが、BBBや細胞膜を通過するには脂溶性(分子型)であることも求められます。生体を緩衝液とみなし、ヘンダーソンハッセルバルヒ等の式では説明できないと分かります。普通に考えればトランスポーターですが、それぞれどのトランスポーターでどのような機序で物質が生体に作用するか、これまで学んできた「薬学」:生命について化学的、生物学的、物理化学的に幅広く解析する応用化学の学問を考えれば分かってきます。メタンフェタミンと同様な脳部に作用するドーパミンはメタンフェタミンと構造が似ていますが、BBBを通過しません。脳内ドーパミン受容体を活性化するパーキンソン治療薬 L-DOPA(ドーパミンに構造類似)はほんのわずかながらBBBを通過し、メタンフェタミン同様 ドーパミン細胞関連に作用します。BBB通過や細胞膜通過の違いがあります。さらに面白いことに、L-DOPAはドーパミン受容体に対して作用効果が減弱していく耐性が生じるのに対して、メタンフェタミンは感受性が増大する逆耐性が生じます。薬学を学ぶことで、総合的に生命のシステムを解明する大きな一歩をふみ出すことができます。
薬学は生体を生理学的プラス物理化学的視点からもみることも、学んでいます。非常に幅広くさまざまな分野を勉強し、大変ですが、これまでの学んできた知識を連結させ、自信をもって国家試験に臨んでもらうことを願っています。