無理。
もういくつ寝るとお正月。仕事はまだおさまらない様相だが、どう足掻いても無理なものは大掃除の時に、目の届かないところに隠して一旦仕切り直そうということでオフィスはもう今年終わった感が漂っている。(ダメ
毎年、この年末年始の切り替わり時にある節目感を、僕個人としてはあまり意識していなかったのだが、今年はこの二ヶ月に渡り大山を越えるべくフィジカルもメンタルも削り倒したので、なんだかやった感だけは一丁前にある。
そういえばその昔、某運送会社のドライバーさんと仲良くなり、一緒に食事に行ったことがある。彼は千駄ヶ谷担当で、非常に人当たりが良く、いつも融通を利かせていただきどれだけ救われたことか。
起業の際も彼を頼り、口座を開いてもらってスムーズに物流を依頼することができた。
そんな彼が千駄ヶ谷担当になった頃、千駄ヶ谷は都内エリアでも地獄の地域だったようで、配属が決定になった時はそれはもう恐怖だったらしい。
初めて千駄ヶ谷でトラックの荷台を開けた時、すり切りいっぱいに隙間なく荷物が載っていて、貧血でめまいを起こしたほどだったそうだ。それはもう絶望的景色で、まずどこからどうやって荷物を下ろせばいいのかわからないくらいパンパンに詰まっていたらしい。
とは言え、端から片付けていくほかに手はなく、なんとか運び切った頃にはもう集荷を終えてなければセンターに戻れないくらいの時間だったそうだ。
配達や集荷に行く先々で遅いと怒られ、誰も彼も自分を優先しろと言って怒鳴られたと、懐かしそうに語っていた。
時は流れて現在、働き方改革で編み工場から染工場までの長距離トラックも便数が減り、物があっても動かない時間ができるようになった。
リードタイムはタイミングを誤れば物流都合で一週間ずれることもある。
11月下旬頃、僕は冒頭の通り、地雷原に踏み込んで大山を迎えていた最中、東京から愛知への荷物でさえ中一日かかることがあった。
ただでさえタイトになっている生産スケジュールが物流で伸びるのは辛いものがある。しかし、ドライバーさんに理由を聞いたら「ブラックフライデーの影響で荷物が溢れかえっていてトラックに乗り切らずセンターに残ってる物がたくさんある」という。
果たしてイベントで割安になった商品を今日明日に必要だと思っている購入者がどれくらいいるのか。それにより通常業務で通常時間に動かしてもらいたいものを滞らせてしまうのは、ドライバーさんも辛かっただろう。
某百貨店のクリスマスケーキがぐちゃぐちゃで届いた方には同情するし、自分がその目にあったら文句の一つも言いたくなったと思う。
我が家の今年のクリスマスケーキは百貨店に予約注文して受け取り時間を指定されていたのでその通りに従った。ところが行ってみれば長蛇の列で、1時間待ちだった。なんのための予約受け取りなのだろうかと憤ったが、冷静に考えてみれば、この仕組みを考えた人は「できる」と思って企てたのだろう。
家族にプレゼントを買うために、レディースブランドの店舗にて、バッグをどれにしようか悩んでいた僕に声をかけてくれた店員さんは「よかったらお鏡で合わせてみてくださいね」と言うものだから、最近の激務によってすり減った精神の僕ではウィットに富んだ反応ができず「僕が使うとでも?」という最低な返しをしてしまった。できることなら「そうそうそう、これをこうやってこうやってな、って僕が使うんかーい!」くらいで返したかった。本当に申し訳なく思っている。
何が言いたいかというと、机上論で実現可能だと思われたオペレーションでも、実際に現場では機能せず、結局は現場の人に無理がかかってしまうということ。
僕らも中間業として、依頼者に回ることが多いので、各現場や物流を担ってくれている方々には感謝しかない。なるべく依頼者からの要望に応えられるように、こちらで現場にスムーズに動いてもらえるよう段取りをとるのが僕らの仕事だ。だから仕事はまだ、おさまっていない。
ただこの『無理』を経験することで、その先に二手に分かれる人種が出てくる。
この『無理』を出来るようにするためにどうするか考える人。
この『無理』を無理だとして文句を言い出す人。
先述の食事を共にしたドライバーさんは今、現場ではなく上層部に上がったそうだ。つまり彼はこの『無理』をどうやったら出来るか考えて行動し、結果的に出世した。室井さん、事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ、上にいって現場が、現場が動きやすい組織にしtkr
願わくば先日うっかり僕に声をかけてしまった店員さんも、めげずに頑張ってもらいたい。その節はほんとごめん。
ケーキをどうやったらビッグイベントでみんながハッピーに受け取れるか、百貨店の人たちもこの経験を踏まえて考えてもらえたら嬉しい。僕は1時間並んだため、バレーボールの練習納めに遅刻して罰金だった。ケーキは無事だったから別にいいけど。
誰がいけないというわけでもないけど、人は皆わがままだ。
こんなわがままな世界に、なんとかわがままを成立させようと、日々手足を動かしてくれている現場の皆様、本当にありがとうございます。
皆様に感謝しながら、今年を締めたいと思います。良いお年をお過ごしください。