『母との距離』レビュー【高林】
🎥アジアの未来🎥
🇵🇭『母との距離』
監督▶︎ペルシ・インタラン
出演▷イザ・カルザド、ノニー・ブエンカミノ、テレース・マルバール、アドリアナ・ソー
【あらすじ・感想】
娘2人と幸せに暮らすリザは、ある日突然娘たちにはなにも言わずに家を出て行きます。それから何の連絡もせず、5年間という空白の時間が家族の間を流れます。夫は、リザの勝手な行動をすべて許し、再び家族へと迎え入れます。5年ぶりに再会し、再び一緒に暮らすことになった母と娘のもどかしい愛のぶつかり合いを描くヒューマンストーリーです。
爽やかなピアノのメロディと共にスタートするこの映画。冒頭から開始約7分間セリフはなく、青い海、少し曇りがかった空、そしてそこを歩くリザ、という構図から作品が始まります。とても静かな印象を受け、たんたんと物語も進んでいきます。
リザは、久々の娘2人とどうにか距離を縮めようと様々な"努力"をし、試行錯誤します。その結果心を少し開いてくれる妹のテレサ。それに対しなかなか距離が縮まらない姉のカーラ。
このリザとカーラの愛のすれ違い、そしてぶつかり合いはこの映画の中で最も重要なキーワードとなります。
わたしは1番の山場である、カーラがリザに思いをすべてぶちまけるシーンに思わず涙が溢れました。なかなか言えずにいた心の底の本音を、彼女の抱く複雑な気持ちと一緒にストレートにぶつけます。カーラがリザにして欲しかったことは"努力"ではなかったのです。
ちなみに、驚くのはあのシーン(観てない方は観て。)ワンカットで撮っているんだそうです。本当に迫真の演技でした。
空いてしまった5年間の家族の溝を、これから長い年月をかけて埋めていく、まだまだ解決しない家族の物語を繊細に描いた作品となっていました。
どんなに仲のいい家族でも、素直に伝えられない思いは必ずあると思います。どんな言葉でもありのままにストレートに言えることが愛を伝えることなのではないかな、とこの映画を観て感じました。たまには家族に自分の思いを伝えてみるのもいいかもしれませんね。
鑑賞者 :高林
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