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与偶
世間一般の人々はよく口にします。
「子供が可愛くない親なんていない」
私の側にしたら、そんなのはただの『神話』。
しかし世間一般ではその『神話』は根強く信じられ、『社会規範の根幹(こんかん)』とさえされています。
だから、私に話しかけてきた人々に、私の実家の話をしても、ほとんどの人からは信じてもらえませんでした。
それでも私は訴え続けます。
『悪魔や鬼のような親』は実在するのです。
「その通りだよ。だって私の親がそうだもの……」
というあなたへ。
もうあなたは親元に帰らなくていいのです。実家から脱出してください。
信じてもらえない人々に理解を求めてからでは遅すぎるのです。
私は、物心がつく前から当たり前のように
両親から虐待をされていたので、その状態が私の日常であり、私の生きる『世界』でした。
だから、その『世界』から脱出するという選択肢を知らなかったですし、考えつきもしなかったのです。
「逃げ出したほうがいい。あなたの生きる世界は他所にある」
という言葉を、せっかく他人から受けとっても、理解して行動に起こすまでには時間がかかりました。そして、もし行動に起こすことにあと少しでも出遅れていたら、死んでいたでしょう。
今度は私があなたに言う番です。
「いますぐ逃げて! どこでもいいから!」
今、あなたはすごく苦しんで、もしかすると死に魅せられている状態ではありませんか?
私はあなたが苦痛の中にありながら、死への誘いを振りきって、今日までサバイバルしてきたことに心から感動しています。
私は20代のはじめのころまで、両親が暴力支配で作り上げた『独裁国家』が私の住める唯一の『世界』と信じこまされ、その闇の中で、ただただ自分を卑下する自問自答を繰り返していました。
今、逃げ出して後ろを振り返って気づきました。
私が監禁されていた、彼らの作り上げたあの『世界』は、驚くほどにちっぽけで、カスのような『吹き溜まり』でした。