10月19日(金)『BS句会5句の中4句選ばれ超嬉しい』
仕事を終えて、ニュージープラットフォームでのBS句会に参加した。5句出し、4句が選ばれ、鴇田智哉先生には2句を並選で選んでいただき、特選で選んでくれた人もいた。席題が、潦で、にわたづみ、あるいは、水たまりで作る。動詞を二つ以上使った俳句も出さないといけなかった。
提出句は、手や足を斬る法(のり)もあり秋刀魚焼く、肩で秋斬るフィジークと言う奇形、名月や肉の稜線から出(いず)る、ディープパープルは津軽の野焼き色、ディズニーの茸は踊る潦(にわたづみ)
手や足を斬る法(のり)もあり秋刀魚焼く せらせら特選
アラブの世界では、泥棒すれば、手を切断され、不倫をすれば石打の刑、同性愛者は首吊りになるなど、残酷な刑罰が今でも行われている。こうした中で、トルコにあるサウジアラビア総領事館に入った記者のジャマル・カショギ氏が、領事館内で殺されたと言うニュースが入ってきた。生きたまま手や足を切断され、殺されたと言う報道もあった。その後の報道では、首を切断されて殺されたと言う話もある。皇太子を批判した記事を書いた事が、皇太子の逆鱗に触れて殺されたと伝わるが、まだ詳細は分からない。マスコミで働いている私には、遠い国の事ではあるが、無関心ではいられない。死と隣り合わせの仕事をしている厳しさと、夕食には、ごく普通に秋刀魚を焼いて食べる事との、生と死の対比を句にしてみた。時事句である。秋刀魚の字の中に刀が入っているが、カショギ氏は、さてどんな刀で殺されたのだろうか。
肩で秋斬るフィジークと言う奇形
このところ私が通う原宿ゴールドジムでは、筋トレに汗を流す青年が増加し、若者の間では、筋トレは一種の流行になっているように感じられる。観察していると、青年の多くが、体全体を筋トレで鍛え上げる従来のボディビルとは違い、肩と背中、腹筋を中心に鍛え、見た目の逆三角形にこだわってトレーニングしている人が多い。ボディビルの大会とは違い、フィジークと言う大会が別にあり、ここでは脚は審査の対象にならず、上半身の逆三角形が争われる。肩を鍛えて、大きくすれば、肩の部分が外に広がり、視覚的に逆三角形が強調されるのだ。肩ばかり鍛えて逆三角形を目指すのは否定しないが、要は肉体のバランスである。バランスを崩した体は、美しさを通り越して、ミャンマーやアフリカの首長族の女性の様に、一種の奇形を生んでいるような気がしてならない。最初は、「肩で風切るフィジークと言う奇形」と作ったのだが、季語がないので、秋斬るとした。
名月や肉の稜線から出(いず)る 鴇田智哉並選
名月がどこから出るのか、東京に生活していると、ビルの合間から月が出るので、変化がない。地方なら山の稜線であったり、海から月が出る地方もあるだろう。私の家の近所に、古城を思わせる有名なラブホテルがあり、先日そのラブホの尖塔の辺りから月が顔を出し、見惚れたことがある。情事の最中、窓から月が顔をだしたら、こんな景色もあるかなと、イメージを膨らませた。男の大胸筋から月が出れば、なだらかな丘陵地帯、女なら乳房の小山か豊満な尻から、月が出たように見えるかもしれない。
ディープパープルは津軽の野焼き色 くずう、せらせら並選
先日ディープパープルのコンサートに行って来た。リッチー・ブラックモアは来なかったが、懐かしいハイウェイスターで始まり、スモークオンザウォーター、ファイヤーボウルなど、青春時代に夢中になった曲がたくさん演奏され涙が出た。
その昔、青森局に勤務していた時、津軽三味線の演奏を何度も聞き、太三味線の力強い音楽が、ハードロックに極めて似ていて驚いた事を思い出した。
ディープパープル、日本語に直すと、深い紫となるが、そう言えば、刈り取りが終わった津軽平野のあちこちで見られた野焼きも紫色をしていた。今では規制が進み、煙で空が紫に霞む情景はみられなくなったかもしれないが、ディプーパープルの曲を聴きながら津軽の野焼きの事を思い出していた。
ディズニーの茸は踊る潦(にわたづみ) 鴇田智哉並選
今日の兼題の潦を使った句である。都会育ちの私が、茸に出会ったのは、山に自生する茸ではなく、ディズニーのアニメーションの中で、カラフルな茸が踊るシーンである。ディズニーのアニメーションの茸には、顔があり、色彩豊かで、飛んだり跳ねたりして、踊っていた。まるで森の中の奇妙な生き物のように思えたものだ。秋の味覚の茸を、従来の茸のイメージから外して、アニメーションの世界で作ってみた。最初は、「ディズニーの茸は踊る森の奥」で作ったのだが,兼題の潦を使うと、句がとても引き締まったと思う。