題詠100☆2023 投稿100首
2011年からの毎年2月のお楽しみ「題詠100」!(旧「題詠マラソン」「題詠blog」)
今年もTwitter上でお題に参加させていただくこととなりました。五十嵐さん、中村さん、いつもありがとうございます。
13回目の参加となる今年も、11月中の完走は叶わず、結局クリスマス前に完走となりました。
以下、今年の題詠100首です。(番号:お題/短歌)
2023-001:引/引き際がわからなくなる一年で終われるはずのひとと七年
2023-002:寝/寝不足の声が聴きたい文字だけの「おはよう」が来る通勤電車
2023-003:古/お互いに古ぼけてゆく目を肌を体を心ごといとおしむ
2023-004:耳/耳裏に鼻を擦りつけ冬の日のきみの匂いを確かめている
2023-005:程度/ちょうどいい程度の恋が欲しかったコップはいつもゆれて溢れる
2023-006:確/指先を確かめるようにふれ合ったエレベーターが着くまでの闇
2023-007:おにぎり/おすすめのおにぎりを教え合いながら声だけ一緒にいる昼休み
2023-008:較/比較的重たい冬だ去年よりきみのLINEが少なくなって
2023-009:一時/四十分会うためだけに一時間かけて真昼の都会へ向かう
2023-010:愚/愚問だと知りつつ愚問を投げかけて同じ答えを何度でも聞く
2023-011:イメージ/人といるところをイメージするだけで嫉妬する病的なわたしたち
2023-012:娯/これもまた娯楽でしょうか誰からも見えない角度でふれる指さき
2023-013:講/めずらしく饒舌なきみの講演を聴く真夜中のLINE通話に
2023-014:ほんのり/ほんのりと漂う不信おだやかに届くことばとことばの波間
2023-015:戸/押し込めたかなしみが隠せてなくてきみに戸惑いばかり与える
2023-016:険/険悪になりようもなく溜め込んだことばの棘に刺されてねむる
2023-017:俳句/乾いた目のきみは俳句でずぶ濡れのわたしは短歌をしとしと零す
2023-018:就/成就しない恋はきれいできたなくて知っててあまいあなたはずるい
2023-019:賀/年賀状すら送れない人と行く遅すぎるしずかな初詣
2023-020:みじめ/みじめってふしぎなことば音にしたとたん惨めになるわたしたち
2023-021:雫/真夜中のタイムラインにてんてんと閉じ込めきれないことばの雫
2023-022:重/失くしそうなときにはじめてひかりだす重ね重ねた日々の平凡
2023-023:毎日/毎日が洗いざらしのバスタオルみたいな心地あなたと生きて
2023-024:禿/後頭部すこし禿げてる眠そうな背中をさすりながら見ている
2023-025:混/かなしさとさびしさ、ふあんとぜつぼうが混ぜこぜの春 ふれていいかな
2023-026:子ども/真夜中のふとんをかぶる今だけはあなたを知らない子どもでいたい
2023-027:著/神様の著作物として生きているからそんなにも愛しいのですか
2023-028:役所/あなたとはけして来ることのない場所として灰色にひかる市役所
2023-029:絶/拒絶より痛い肯定こんな日も家電のようにきみは正しい
2023-030:グラム/昨日より500グラムだけ軽くなるこれは手放した執着のぶん
2023-031:貿/不利益な貿易のように差し出したこころ 価値など知らないひとに
2023-032:抜/タイミングだけは抜群ぺしゃんこの夜なつかしいひとからの文字
2023-033:ひらひら/ひらひらら もっと自由に軽薄にその手を離れてしまえたらいい
2023-034:倣/生きるとは模倣すること視野の広いあなたに倣いさよならをする
2023-035:測/もうそろそろ飽きられそうで旅に出る予測可能なわたしを壊す
2023-036:削除/記憶ごとすべてを削除したくなる夜更けの部屋のただがらんどう
2023-037:荻/荻の葉の波打つ川辺 はじめての目の奥の火と囁きとゆび
2023-038:ゲーテ/ゲーテより口づけが効く不機嫌のコントロールができない夜は
2023-039:吊/ふらついたままに十年あの夜の吊り橋効果がまだ続いてる
2023-040:紺/紺色の雨は滲んでもう君が乗ることのないバスを見送る
2023-041:覗/覗きこむように唇に置いていく言葉にしてはいけないこころ
2023-042:爽やか/きみだけに気づかれている泥濘んだときほど爽やかに笑うこと
2023-043:掻/疼くほど忘れたくって掻きむしる傷跡になることも知ってて
2023-044:批/沈黙のまま批判的指さきできみがかき回すクリームソーダ
2023-045:筏/紐の切れた筏わたしは行き先もわからないまま海に震える
2023-046:憐れ/憐れんでくれてもいいよ三時間動き続けるLINEを見てる
2023-047:塀/何もかもきみに話せていたころは無かった塀が積まれつつある
2023-048:伺/「おつかれ」はたぶんご機嫌伺いのことば 夜更けの部屋に灯る火
2023-049:水仙/水仙が胸に咲きそうあまりにも君が大事にしすぎるせいで
2023-050:範/あのころの選択範囲の小ささをきみを選んだ理由にしない
2023-051:履/泣き方と受け止め方を体温にふれあうことで履修している
2023-052:全体/全体を見ている君がくれる手に引き上げられてまた息をする
2023-053:党/甘党であり辛党であるひとの淡白でやさしい薄い舌
2023-054:いよいよ/一時の感情だろうと思ってた、のに、だから、いよいよ、ごめん、もう
2023-055:釘/糠に釘くらい無意味に抗えば抗うほどにきみは深まる
2023-056:謙/謙虚とかそんなんじゃなくきみのこともっとしあわせにするひとはいる
2023-057:ライン/お酒とか夜とかいいわけを抱いてふたりのセンターラインを超える
2023-058:箇/数箇所にたしかにそこにいた跡を残してきみが帰る日常
2023-059:診/問診のよう一日のできごとをぽろぽろ零す夜更けのLINE
2023-060:醤油/お醤油を買い足して出るスーパーの光 ここはもう逢えない世界
2023-061:庇/掴まれた心を庇いつつ笑ううっかり転げ落ちないように
2023-062:魔/一瞬の魔法のように秋はきて病的な逢いたさにくずれる
2023-063:こぶし/こぶしひとつ突き上げておく依存する前にわたしを殴れるように
2023-064:閣/脳内の閣議決定に従って不本意ながらあなたを赦す
2023-065:状/なにもかもわからないままふれるから液状になるふたりの時間
2023-066:二階/ドトールの二階の隅で閉店になるまで今日を分け合っている
2023-067:乞/乞うことのないようできるだけ遠いことばを選ぶあいたい夜は
2023-068:捕/捕らえればまた暴れだす限りなく恋の形に似た執着は
2023-069:トンネル/トンネルをふたつくぐって逢いにくるきみと毛布のトンネルにいる
2023-070:請/申請をすれば祝福される地でひとり同士のままの数年
2023-071:感謝/重ねれば重ねるほどに薄くなるラザニアみたいな感謝をもらう
2023-072:惰/これ以上一歩も動けないくせに惰性できみを愛してしまう
2023-073:からくり/螺子を巻けば動くからくりこの恋は止まったままで埃をかぶる
2023-074:腫/この夜をまだ溶かせない腫れ物にさわるみたいな硬い指さき
2023-075:案内/案内板どおりに行けば辿り着くはずの終わりが見つけられない
2023-076:灰/灰色の冬たちこめるうちがわの空もう誰にも会えそうにない
2023-077:畳/泣き出してしまわないよう押し当てた畳の跡の残る手のひら
2023-078:スマート/いつだってぐしゃぐしゃになるスマートに消えてしまえる人でありたい
2023-079:僅/真夜中の空気は冬で残された僅かな熱も忘れゆく肌
2023-080:載/冬晴れを助手席に載せ駅へゆくコート姿のきみを拾いに
2023-081:手ごたえ/手ごたえはありすぎるほど今日だけでちゃんとあなたに嫌われたはず
2023-082:侮/近づいて覗いたせいで戻れない侮りすぎた君の深淵
2023-083:浄/逢えた日のその一瞬の煌めきが浄化してゆく独りの日々を
2023-084:授業/授業より後ろ姿が気になって隠せないことがまた増えていく
2023-085:潤/もう今日は終わりはじめて夕暮れに言えないままの心が潤む
2023-086:派手/思い切り派手に決壊してみたい声を殺して泣く毎日に
2023-087:汰/煩雑な願いは淘汰されてゆきただひとすじのあいたさがある
2023-088:メンバー/「リメンバー・ミー」を聴くときいつも泣くきみが忘れてしまったわたし
2023-089:癒/癒されたいわけじゃないけど眠るとき代替として抱くしろいくま
2023-090:諮/最善を諮れば離れることと言う正しいわたしも脳内にいて
2023-091:ささやか/身勝手なわたしのささやかな罪を夜ごとあなたは飲み込んでしまう
2023-092:房/乳房とも言えない乳房に抱き寄せるわたしよりすこし大きな頭
2023-093:預/もう恋と呼べなくなるまであとすこし預かっていてほしい衝動
2023-094:希望/希望的予測は見事に破れ去り今月も逢えないまま終わる
2023-095:滴/止めようとしてもほたほた閉まらない蛇口みたいに滴るこころ
2023-096:雌/雄雌の違いを確かめるようにあなたの硬い喉を滑る手
2023-097:天気/「天気雨」ってからかうきみも好きだった ちゃんと笑ってさよならするね
2023-098:辱/そんなこと言わないひとにかんたんな辱めとして「おいで」をねだる
2023-099:備/衝撃に備えてすこし座り直す もうさよならを言ってもいいよ
2023-100:掛/意味のあることばと意味のないことば掛け違うたび冷えてゆく声
以上100首、2月1日にスタートしましたが、4月半ばから9月までは私生活でいろいろとあったためまったく詠むことができず、12月23日にやっと遅刻しつつのゴールとなりました。
今年の裏テーマは「基本に立ち返って恋歌」という設定で、本来なら詠みやすいはずだったのですが、そんなわけで結局遅刻となってしまいました……ショボン…
毎年のお楽しみ「題詠100」、今年も参加できてとても嬉しかったです。来年も参加できるといいな。
★以下、これまでの裏テーマ一覧です。(備忘録)
- 2011 恋歌
- 2012 恋歌
- 2013 学生・学校
- 2014 大人短歌
- 2015 痛
- 2016 色
- 2017 キャラクターを立てる(女性/30代後半/会社員)
- 2018 水・液体
- 2019 五感
- 2020 食
- 2021 切なさ
- 2022 虚構創作なし
- 2023 恋歌