たばこ case01 作・橋谷一滴
2018.10.29 12:42
あ、たばこ。
あ。
これは確か、確かというか竹内の。竹内のたばこだ。
今日は1日休みで、久しぶりに掃除をしていたらこんな時間で。
17時にメールが入っていた。
「あきちゃん。最終バスで東京戻るよ」
竹内からではなかった。
竹内は私の親友だ。
ずっとちょっと変だった。
毎日割れた眼鏡をかけていて、吸わないたばこをズボンの右ポケットに入れていた。
そのたばこが今私の手にある。
たばこの封を開けた。
私は竹内のことが好きだった。
のだと思った。
AMERICAN SPIRIT
彼の持っていたたばこの匂いを初めて嗅いだ。
なんだかおかしくなって一人で笑った。
私はいつまでたっても彼のことを思い出して笑うだろう。
やっぱり君は私の親友なんだと思う。
やっとメールを返してご飯を作り始める。
「焼きそば作って待ってる。 あき」
竹内。君のおかげで私は今日も幸せだ。
きっと君にも良いことがあると良い。
私の携帯に竹内のアドレスはもうなくて、君から返信がくることはもうないのだ。
2018年10月29日
橋谷一滴