たばこ case 03 作・草場あい子
2018.10.31 00:30
換気扇の音。たばこの匂い。
君はいつもキッチンに行き、換気扇を回して、たばこに火をつける。
朝起きてすぐ。ご飯を食べた後。スマホを見ながら。
気づくと君はたばこを吸っていた。
たばこってそんなに美味しいの。
君は答えた。
「美味しくないよ」
じゃーなんでそんなに吸うの。
「んー、癖かな」
変なの。
「確かに」
君ははにかみながらたばこの灰を皿に落とす。
君にはこだわりがある。
たばこの箱はボックスじゃなくてソフト。
ポケットに入れたとき角が当たるのが嫌らしい。
だから絶対ソフトを買う。
変なこだわり。
一度だけ言ったことがある。
たばこ吸ってみたい。
でも。
「んー、大人になったらね。」
止められちゃった。
20歳になった。
一人暮らしを始めた。
換気扇の音もたばこの匂いもしない部屋。
なんだか物足りない。
コンビニに行った。
君と同じソフトのたばこ。
家に帰って換気扇を回し火をつける。
ほんとだ美味しくない。
でも、大人だからいいよね。
2018年10月31日
草場あい子