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クテノポマ専科

クテノポマ ネブロースム(Ctenopoma nebulosum)

2018.11.23 14:24

【学名】Ctenopoma nebulosum


【命名者】Steven Mark Norris & Guy G.Teugele(1990)


【体長】96.5mm(SL)


【形態的特徴】

    本種は、未成魚のクテノポマキングスレイと形態的特徴が似ているが、本種の成魚はその独特のカラーパターンにより、キングスレイとは明らかに異なる印象を見せる。"dark chocolate brown"の地色に、体側面及び頭部は"light brown"の斑模様が散りばめられるのだ。その他のカラーパターンは以下の通り。

①背鰭・臀鰭・尾鰭にまで地色は及ぶが、鰭先部分は通常透明となる、②腹鰭は暗く着色する、③腹及び喉は薄い茶色で、暗色の斑模様、または、いくつかの不規則な"dark bar"が見られる、④吻の下側には黒褐色の線が入る

   本種のラビリンス器官は、他のクテノポマ属に比べて、そのサイズ及び複雑性が低減されている。それは、この種が溶存酸素濃度の比較的高い流水域に棲息することに起因しているらしい。


【生息地】ナイジェリア南東部のSombreiro川及びImo川(ニジェールデルタ)


   本種は幅およそ10m、水深1~2mの流水域からのみ発見されており、沼地や停滞した水域には生息していない。また、季節的に氾濫してできる氾濫原の水路からも見つかっておらず、このような水路と季節的には繋がっている低地の森林に見られるブラックウォーターに生息しているようだ。

   ニジェールデルタの河口寄りの、僅かに干満を認めるエリアからも標本が採集されているが、強い干満を認めるエリアからは全く採集されることはなかった。

   また、上述の通り、流水域に生息しているとはいえ、捕獲された場所の多くが水面を覆った浮遊植物の付近であったようであることから、決して急流の中を泳ぎ回っているわけではなく、流水域の中にある植生の多い比較的流れの緩やかなポイントで、浮遊植物に身を隠しながら生息していると推測される。


【寿命】不明


【好適環境】水温:24℃(※)

                    pH:不明

                    硬度:不明

   ※詳細不明だが、流水域に棲息していることから、他のクテノポマ属に比べ比較的高温に弱い可能性がある。


【シノニム】なし


【その他】

 ・私がweb上で調べた限りでは、本種は2009年より以前に国内に輸入された記録がある。しかし、その際はネブロースムとは明らかに棲息地が異なるクテノポマファスキオラータムやクテノポマウィークシーと共に輸入されたと見え(両者ともコンゴ川流域中心)、また、流通名かインボイスかは不明ではあるが、「クテノポマネブローサムsp.アーゲントヴェンター」として扱われていたこともあるようだ。Ctenopoma argentoventerは現在、クテノポマキングスレイのシノニムとされている。ネブロースムがキングスレイと似た外観を持つ種であることを考えると、過去に国内に輸入された「クテノポマネブロースム」はクテノポマキングスレイに良く似た姿をしていたものと思われる。実際に、web上で確認できる過去に輸入された「クテノポマネブロースム」は、明らかに未成魚であり、上述の独特のカラーパターンを示していない。もし、現在も当時の「クテノポマネブロースム」を飼育している方がいたら、ぜひその姿を確認させて頂きたい。


・この種の種小名「nebulosum」は、星雲状の、霞みのような、数色混合の雲のような、といった意味がある。その独特の斑模様を表したものだろう。


・ナイジェリア南東部のニジェールデルタを主とした地域に限局的に生息しているCtenopoma nebulosumは、この地域の「標徴種」(一つの群落の特徴となる種)として、Polycentropsis abbreviata(アフリカンリーフフィッシュ)と共に挙げられている。

C.nebulosumは流水域にのみ生息するとされるが、上述のP.abbreviataが、植生が多く流れのない、または緩やかな水域に生息するとされる事と、捕獲されたC.nebulosumの多くが、水面を覆った浮遊植物の付近から発見されているとの報告から、C.nebulosumも急流の中を泳ぎ回っている訳ではなく、流水域の中で特に植生の多い、比較的流れの緩やかなポイントで、浮遊植物の中に身を隠しながら生息しているものと推測される。   


・2019年7月末、ついに正真正銘のクテノポマ ネブロースムと思われる個体群が輸入された。インボイスか流通名か不明だが、小売店に流通する前段階では「ナイジェリア産 クテノポマcf.キングスレイ」として扱われていた。

   その姿形は確かにキングスレイに似ているが、身体全体には、文献や海外の画像データで見られる独特の斑模様が認められる。これまで国内で流通した個体では、私が知る限り、この斑模様が確認できる資料は残っていない。

   その独特の斑模様を捉えて「霞みのような」という種小名をつけられた本種は、その存在もまさに霞みががかったような情報でしか知ることができなかったが、ついにその姿を目の当たりにすることが出来た。

   上述の独特の斑模様は、常に見られるわけではなく、同種同士の関わりの中で顕になることが多いようだ。普段はキングスレイよりも薄いグレー一色に近い体色だが、気分によっては全身が斑状に黄色味がかったlight brownを現すことがある。


【参考】

1.Steven Mark Norris & Guy G. Teugels.1990.A New Species of Ctenopoma from Southeastern Nigeria

2.Melanie L. J. Stiassny, Guy G. Teugels, Carl D. Hopkins 2007.THE FRESH AND BRACKISH WATER FISHES OF LOWER GUINEA,WEST-CENTRAL AFRICA,Institut de recherche pour le développement,P265-267

3.Steven M.Norris and Michabl E.Douglas.1992.Geographic Variation, Taxnomic Status,and Biogeography of Two Widely Distributed African Freshwater Fishes:Ctenopoma petherici and C.kingsleyae(Teleostei:Anabantidae)

4. WIKIPEDIA「Lower Guinea」

5. Fish Base 「Ctenopoma nebulosum」


画像提供:ユニバーサルアクアリウム 村松和幸氏